執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)
※この記事は2021年10月に書いたものを、読みやすく整えています。
ターゲットは「購入してほしい客層」、ペルソナはその中の「具体的な一人」です。集客につながるのは、その一人の思考や行動をありありとイメージできるペルソナです。
ターゲットだけでは「20代・女性・東京都在住」でもさまざまな人が含まれ、決めていないのと同じになりがちです。ペルソナは架空の人物ではなく、話を聞ける実在の人から決めましょう。
- ペルソナとターゲットの違い(比較表つき)
- ペルソナ決めで一番大切なこと
- ペルソナ設定でよくある間違い3つと例外
- ペルソナを決めると、なぜ伝わる文章になるのか
ビジネスを始めると、はじめに「ペルソナ(理想のお客様)を決めましょう」と教わることが多いと思います。
ところが、ペルソナをどう設定するかで集客の結果は大きく変わります。さらによくあるのが、ペルソナをターゲットと取り違えているために、集客がうまくいかないというケースです。
多くの人が言葉は知っていても、しっかり向き合って考えていないのがペルソナです。この記事では、ターゲットとの違いから、設定でよくある間違い、ペルソナを文章に生かす方法までお伝えします。
ペルソナとターゲットの違い
事業のマーケティングで欠かせない言葉が「ターゲット」と「ペルソナ」です。講座に来てくださる女性起業家の方に聞くと、「ペルソナは聞いたことがない」「聞いたことはあっても説明はちょっと…」という反応も少なくありません。まずは違いを整理しましょう。
| ターゲット | ペルソナ | |
|---|---|---|
| ひと言でいうと | 購入してほしい客層(集団) | 理想のお客様(具体的な一人) |
| 決め方 | 年代・性別・既婚未婚・職業・年収・ライフスタイルなどの属性 | ターゲットの中から、実在する一人を選ぶ |
| 人数 | 該当する人が多数いる | 一人 |
| 見えるもの | どんな層に届けるか | その人の悩み・価値観・行動・言葉づかい |
| 使いどころ | 市場の大きさや商品の方向性を決める | 発信の内容・言葉選び・商品設計を決める |
ターゲットとは、抽象度の高い「客層」
ターゲットとは、購入してほしい客層のことです。年代、性別、既婚か未婚か、職業、年収、ライフスタイルなどの属性で判断します。どんな条件にするかにもよりますが、該当する人は多数いるのが一般的です。
ペルソナとは、具体的な「一人」
一方で、ペルソナとは理想とするお客様で、具体的な一人です。ターゲットをさらに絞り込み、「この人のためにこのサービスをつくろう!」と思えるくらい、自分もワクワクする相手です。
ターゲット層の円の中に、ペルソナという点が一つあるイメージです。
同じ「20代・女性・東京都在住」でも、いろいろな女性がいます。ターゲットだけでは、決めているようで決めていないものになってしまうのです。
このとき、気持ちや状況から「こんな商品が欲しい」「こんなことに困っている」と拾い上げることには価値があります。一方で、年代や地域などの表面的な特徴だけで決めた気持ちになるのは避けましょう。
ペルソナ決めで一番大切なこと
ペルソナ決めの本質をひと言でいうなら、その人の思考や行動を、ありありとイメージできるかどうかです。
ペルソナを決めるときによく使われるのが、次の2つの切り口です。
- デモグラフィック:年齢・性別・職種・家族構成などの人口統計的な属性
- サイコグラフィック:人柄・価値観・興味・ライフスタイルなどの心理的な特徴
デモグラフィックは、先ほどの「20代・女性・東京都在住」のような情報です。20代と50代では状況が大きく違うので決めたほうがいいのですが、27歳と28歳で何が違うかといえば、ほとんど差はありません。
地域も同じです。「東京=都会」と思っていても、東京都には檜原村や奥多摩町のような自然豊かな地域もあり、千葉県市川市のほうが日本橋に近く、よほど都会的かもしれません。「東京」「千葉」とひとくくりにせず、「どこに住んで、どんな暮らしをしているか」まで解像度を上げる必要があります。
デモグラフィックは決めないより決めたほうがいいものの、それ以上に大切なのがサイコグラフィック。つまりその人の思考や行動をイメージできるかが重要なのです。
ペルソナ設定でよくある間違い3つ
「ペルソナを決めました!」とお話ししてくださる方の中には、もったいないと感じる例があります。よくあるのが次の3つです。
- 架空の人物で設定する
- 芸能人で設定する(一部例外あり)
- 友人で設定する(一部例外あり)
間違い1:架空の人物で設定する
ペルソナを架空の人物で自由に決めると、自分に都合のいい設定になり、「そんな人、いないよね…」(いてもごく少数)ということが起こります。
以前、「ペルソナは決まっています!」と自信を持っておっしゃった方から、次のような設定を聞いたことがあります。
・30代女性
・子どもは2人(3歳と1歳)で育休中
・本人の年収が800万円(世帯年収ではない)
・東京の郊外に住んでいる
「この方はお知り合いですか?」とお聞きすると、「いえ、いないです。ほかの先生に『どんな人にお客様になってほしいか考えなさい』と習ったので、自分が売りたい人を考えました」とのお返事でした。
ご本人が東京の郊外に住んでいて、「育休中のママ向けのサービスをしたい。そして、お金に余裕のある人に来てほしい」という思いから、空想のペルソナをつくってしまったようです。30代で育休中、しかも本人の年収が800万円という女性は、いたとしてもかなり少数でしょう。
いない人(少数派)のニーズを想像すると、ずれにずれが重なり、まったく当たらなくなってしまいます。結果として、集客できない発信や商品づくりに時間を費やしてしまうのです。
間違い2:芸能人で設定する
ペルソナが実在する人なら、意見を聞けるので、相手の視点に立ってニーズを正確に知ることができます。中には「ペルソナは芸能人にしましょう」と教わることもあるそうです。
けれど、ペルソナを決める大きな目的はマーケティングをすること、つまりニーズを聞き出すことです。この目的があるので、私はニーズを聞き出せない芸能人をペルソナにすることはおすすめしていません。
特に、その分野で事業を始めたばかりであるほど、実在する人に話を聞くことが大切です。
一人ではなくチームで事業を進める場合は、一つの解決策になります。それぞれの友人をペルソナにすると、ほかのメンバーは会ったことも話したこともない「よくわからない人」になってしまうからです。
ただし、同じ芸能人でも、見ている番組や役によってイメージは変わります。例えば私は田中みな実さんに「美容にも自分にもストイックな努力家で、周りの方を大切にする気配りの人」というイメージを持っていますが、以前の「ぶりっ子」のイメージが強い人もいるでしょう。芸能人をペルソナにするなら、どの番組・どの場面のイメージなのかをチームですり合わせることが欠かせません。
間違い3:友人で設定する
友人をペルソナにすることも、基本的にはおすすめしません。ビジネスを始めたばかりのころは知り合いが友人ばかりのこともあるので、はじめは友人でも、ゆくゆくはビジネスでつながった人へ移していくのが理想です。
なぜなら、友人は信頼関係があるうえで「買うよ!」と言ってくれている可能性があるからです。「(本当はそこまで必要ではないけれど)あなたが頑張っているなら買うよ」という購入は、二人の関係性があってこそですよね。
関係性に頼ったサービスをつくると、ずっとその関係性に頼ってビジネスを続けることになり、新しいお客様への再現性がありません。応援はありがたいことですが、目指したいのは、応援ではなく「プロとして必要だから」と購入してもらう流れです。そのためには、もともと信頼関係のない人が欲しくなるようにしていく必要があります。
友人でもペルソナにしていい、むしろするべきなのは、次のような人です。
・応援を差し引いても、商品やサービスを「欲しい」「必要」と思っている人
・本音でフィードバックをくれる人
優しい友人ほど、大切なあなたを気づかって本音を言いにくいもの。意見を聞くときは特に注意が必要です。
まとめると、ペルソナは次の条件をそろえるようにしましょう。
- 実在する人にする
- できれば友人ではなく、ビジネスで知り合った人にする
- 実際に話を聞いて、マーケティングをする
そのうえで大切なのは、相手の悩みや求めていることなど、思考や行動をイメージできる人にすることです。
ペルソナを決めると、伝わる文章になる理由
ペルソナを決めたら、自分目線ではなく、相手目線の文章を書きましょう。
私はこれまで、企業やコミュニティからご依頼をいただき、延べ15,000名以上の前で講演してきました。「わかりやすい!」と思っていただけるように徹底してきたのは、次のことです。
- ペルソナを決める
- 伝える分野について、ペルソナがどのくらい知っているかに合わせる
- 「無駄な時間をとらせない」「説明を省きすぎない」
業界の専門用語ほど、ほかの業界の人に伝わらない言葉はありません。文章を読んでもらうことは、相手の時間をいただくことです。その時間を奪ってしまうか、役に立つ情報を届けられるかは、誰に向けた情報なのかを決めて、そこに集中できているかで変わります。
わかりやすい文章というと細かいライティングの技術を思い浮かべがちですが、それ以前に大切なのが、相手の視点や経験に合わせて伝えられるかです。
例えばInstagram(インスタグラム)についてお伝えするとき、相手がInstagramの価値を知らなければ、「Instagramのよさとは」「ほかのSNSとの違いとは」から伝える必要があります。Instagramがいいと知っているけれど使い方がわからない人なら、どこまでわかっていて、どこからわからないのかを確認して準備します。
- フィード投稿とストーリーズの違いはわかるか
- ストーリーズを使ったことがあるか、見たことはあるか
- ストーリーズの特徴を知っているか
- ストーリーズとハイライトの違いを知りたいのか
- ストーリーズのビジネス活用を知りたいのか
ハイライトとの違いまで理解している人にこれらの説明を入れると、相手の時間を奪ってしまいます。逆に、知らない人にいきなりビジネス活用の話をしても、「そもそもストーリーズって何?」となって何も吸収できません。
ペルソナを決めると、相手がどこまで理解しているかという前提が決まり、欲しい情報に集中できます。相手に合ったところから順序立てて伝えることで、吸収してもらえる。それが、お互いにとっていちばんいい伝え方です。
よくある質問(FAQ)
ペルソナとターゲットの違いを一言でいうと?
ターゲットは「購入してほしい客層」という集団で、ペルソナはその中にいる「具体的な一人」です。ターゲットは年代・性別・職業などの属性で決め、ペルソナはその人の悩み・価値観・行動までイメージできるところまで絞り込みます。
ペルソナとターゲットは、どちらを先に決めればいいですか?
先にターゲット(客層)を大きく決め、その中から実在する一人をペルソナとして選ぶ順番がおすすめです。ターゲットの円の中に、ペルソナという点が一つあるイメージです。
ペルソナとターゲットが合致しないときは、どうすればいいですか?
多くの場合、ペルソナが架空の人物で、実在する客層からずれています。実在する人をペルソナにし直し、その人が本当にターゲットの客層に含まれるかを確認しましょう。ペルソナは想像ではなく、話を聞ける相手から決めるのが基本です。
セグメントとペルソナは何が違いますか?
セグメントは市場を年代・地域・ニーズなどで切り分けた「区分」、ターゲットはその中から狙うと決めた「客層」、ペルソナはさらにその中の「具体的な一人」です。大きい順に、セグメント→ターゲット→ペルソナと考えると整理しやすくなります。
ペルソナは芸能人や友人でもいいですか?
基本的にはおすすめしません。ペルソナを決める目的は、ニーズを聞き出してマーケティングに生かすことです。芸能人には話を聞けず、友人は関係性で買ってくれることがあるため、本音のニーズがわかりにくくなります。チームでイメージを共有するときや、本音でフィードバックをくれる友人の場合は例外です。
まとめ
- ターゲットは購入してほしい客層、ペルソナはその中の具体的な一人
- ペルソナ決めの本質は、その人の思考や行動をありありとイメージできるか
- 架空の人物・芸能人・友人をペルソナにするのは、基本的には避ける
- ペルソナが決まると、相手の理解度に合わせた、伝わる発信ができる
ペルソナは一度決めて終わりではなく、実際にお客様と話すたびに解像度が上がっていくものです。まずは「この人のために」と思える一人を、身近なお客様の中から探してみてください。
マーケティングの本質×SNSのトレンドを掛け合わせた、SNSからの女性集客を専門としている。14歳でメールマガジンを始め、8ヶ月で20,000人の登録を達成(当時の歴代最年少記録)。個人・法人の500件以上のSNSアカウントを個別に指導。これまでの登壇・研修先は、ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など。全国で延べ15,000名以上へ講演・研修を実施している。詳しいプロフィールはこちら。