執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)
真似されないものは、あなたのストーリーと、USPの2つだけです。商品の見た目も、価格も、投稿の型も、真似しようと思えば真似できます。けれど「なぜあなたがそれを始めたのか」という道のりと、「なぜあなたから買う理由があるのか」という独自のウリは、外から持っていくことができません。
この記事では、USPの作り方を「独自のウリ」と「独自の売り込み提案」に分けて整理し、ストーリーと組み合わせて選ばれる理由に変えるまでを順番にお話しします。
- 真似されたときのモヤモヤの正体と、どう受け止めればいいか
- 自分が参考にする側になったときの、ちょうどいい距離感
- 誰にも真似できない「ストーリー」を掘り起こす4つの問い
- USPの2つの意味と、個人が磨くべきなのはどちらか
- 独自のウリをつくるために必要な3つの要素
真似されるのは、真似される価値があるから
どんなビジネスでも、競合がまったくいない世界にいくのは難しいことです。狙っていなくても、偶然かぶってしまうこともあります。
そして「悔しいというほどではないけれど、なんだか複雑だった」という経験は、決して少なくないように思います。私自身も、以前はよくそう感じていました。
でも「ではなぜ、人は真似をするのか」と本質だけを取り出すと、答えはとてもシンプルでした。
真似は大いに結構。真似される価値があるから真似されるの。本物の証拠なの。
※ココ・シャネルの言葉として知られていますが、初出がどこなのかは探せていません。
自分が誰かを参考にするときのことを思い出すと、腑に落ちると思います。いいと思っていないものを、わざわざ真似しようとは思いません。真似されたということは、少なくとも「いい」と判断されたということです。

参考にする側になったときの、ちょうどいい距離感
受け止め方の話をしたので、逆の立場も書いておきます。ここは価値観が分かれるところなので、あくまで私の考え方としてお読みください。
一言かけるだけで、受け取られ方が変わる
お世話になっている方や親しい方なら、「素敵な発想なので私もやってみていいですか」と確認するだけで、相手も嬉しいはずです。自分の考えを「いい」と言われているのですから。
私も受講生の方から「これ素敵です、やってみていいですか」と言っていただけると、それだけで嬉しくなります。結果を出してほしくてお伝えしているので、反応が返ってくること自体がありがたいのです。同じ行動でも、黙って続けると受け取られ方が変わってしまいます。
持っていくのではなく、紹介する
もうひとつ気をつけたいのが、相手の努力を、自分の努力なしにいただいてしまう形です。極端な例ですが、いいと思った記事をそのままコピーして自分のブログに貼るようなケースです。
それなら、相手を紹介する形にしたほうがずっといい。「◯◯さんのこの言葉に共感しました」「これを書いている◯◯さんはこんな方です」と添えるだけで、受け取る側の気持ちはまったく変わります。
結局のところ、「相手がどうしたら喜ぶか」「どうしたら嫌な気持ちにならないか」を考えることが、ビジネスでもそのまま効いてくるのだと感じています。
誰にも真似できないのは、あなたのストーリー

ここからが本題です。人とかぶらないもの、人が真似できないものは何か。答えはストーリーです。
たとえば私の場合、以前は自分のメディアで女性起業家の方に向けたサービスをしていました(現在は女性という括りは設けていません)。同じように女性起業家向けのサービスをしている方は、ほかにもたくさんいらっしゃいます。
でも、それを始めたきっかけは人によって必ず違います。始めるときの覚悟も、続けている理由も違う。つまり、ストーリーが違うのです。
私の場合は、母と祖母のことでした
就職をしたことがない私が、なぜ女性起業家の方に向けて仕事をしていたのか。理由は2つあります。
ひとつは母のことです。母は立派な企業で同期の男性よりも出世していた人でしたが、祖父が「女性は家にいるもの」という価値観だったため、子どものことを考えて専業主婦になりました。私にとっては有難いことでしたが、社会にとっては損失ですし、何より母自身が、好きだった仕事を辞めたことに複雑な思いを抱えていました。
いまはインターネットのおかげで、どこにいても柔軟に働けます。仕事の種類も増えました。だからこそ、母のように仕事が好きな人が、どんな環境でも選択肢を多く持って、自分が納得できるほうを選べるようになってほしいと思ったのが始まりでした。
もうひとつは祖母の介護です。学生を経てすぐに個人事業主になったことで、平日の午後に帰宅して自宅介護を5年間手伝い、最期を看取ることができました。自宅介護が正解だとは思いませんが、家族の希望に合わせて選べること自体に価値があると思っています。
ストーリーを掘り起こす4つの問い
こうしたストーリーは私だけのものですが、それは皆さんも同じことです。書き出すときは、この4つを順番に埋めてみてください。
- なぜ、今の仕事を始めたのか
- どんな覚悟だったのか
- なぜ、今でも続けられているのか
- モチベーションの源は何か
人は想いで動きます。自分にとっては当たり前すぎるストーリーこそ、かけがえのないものです。
共感だけでは選ばれない。だからUSPを持つ

ストーリーがあれば、応援してくれる人や、好きだと思ってくれる人が増えます。けれど現実には、もっとシビアに見られる場面も少なくありません。
ビジネスは論理と感情の両方で動きます。お客様の側にも「共感したから、好きだから、だけでは購入できない」という気持ちがあります。そこで必要になるのが独自性です。
USPには2つの意味がある
USP(Unique Selling Proposition)には、次の2つの意味があります。

- 独自のウリ:あなたから買う理由そのもの
- 独自の売り込み提案:売り方そのものがユニークであること
ドミノ・ピザの「30分」は、速さではなく温度から逆算されていた
後者のわかりやすい例が、宅配ピザの「30分」です。ドミノ・ピザが日本に進出したのは1985年で、30分という数字は当初から掲げられていた目標であり、創業者が考えたコンセプトでした。
おもしろいのは、この30分が速さではなく、おいしい温度から逆算された数字だったことです。同社へのインタビュー記事によると、人が熱いものをおいしいと感じるのは60度前後。焼き上がったばかりのピザは80度ほどで、注文から7〜8分で焼き、10〜20分で届けると、ちょうどその温度になるのだそうです。
当初は「30分を超えたら700円引き」という打ち出し方もしていましたが、アメリカで配達を急ぐあまりの重大な事故が社会問題になったことを受けて、日本でもこの打ち出しは取りやめ、安全を最優先する方針に切り替えたとのことです。
出典:グルメ Watch「ドミノ・ピザに聞く、デリバリーの常識が“30分以内”になったワケ」(2021年12月8日)
ここから受け取りたいのは、売り方のアイデアそのものではありません。独自の売り方は思いつきではなく、お客様の体験から逆算されて生まれているということのほうです。
個人が磨くべきなのは「独自のウリ」のほう
とはいえ、面白い売り出し方を個人が継続的に打ち続けるのは、なかなかの難題です。売り方はあくまで手法でもあります。
そこで大切になるのが、前者の「独自のウリ」です。USPには、次のような種類があります。

独自のウリをつくるための3つの要素

独自のウリを磨くときに置きたい基準は、大きく2つです。
何かひとつのジャンルで1番になる
全体で1番になる必要はありません。範囲を狭めていけば、1番になれる場所は必ずあります。狭めることは、負けを認めることではなく、勝てる場所を決めることです。
ビジネスでわかりやすいオンリーワンになる
みんながオンリーワンであることは間違いありません。ただ「ビジネスでわかりやすい」とあるように、大切なのはお客様がお金を払うべき理由のあるオンリーワンになることです。
「私にしかできません」ではなく、「この状況の人には、私の形がいちばん合っています」と言えるかどうか。ここが分かれ目になります。
ちなみに私自身も、新しい事業をつくるときには、いつもこの図の順番で考えています。ストーリーで「なぜあなたなのか」を伝え、USPで「なぜ買う理由があるのか」を示す。この2つが揃うと、真似のしようがなくなります。
よくある質問(FAQ)
真似されていると気づいたとき、指摘したほうがいいですか。
表現や写真をそのまま複製されている場合は別ですが、発想や切り口が似ている程度であれば、指摘に時間を使うより自分の更新に時間を使うほうが結果につながります。表面の要素は真似できても、ストーリーとUSPは持っていけないためです。
特別な経験がなくても、ストーリーは書けますか。
書けます。ストーリーはドラマチックな出来事のことではなく、始めた理由・覚悟・続けている理由・原動力の4つです。本文の4つの問いを書き出してみると、自分では当たり前だと思っていたことが、いちばん人に伝わる部分だったと気づくことが多くあります。
USPをつくるには、珍しい売り方を考えないといけませんか。
必要ありません。USPには「独自のウリ」と「独自の売り込み提案」の2つがあり、一人で事業をしている場合は前者を磨くほうが現実的です。珍しい売り方は続けるほど負担が大きくなりますが、独自のウリは積み上がっていきます。
ストーリーとUSPは、どちらから手をつければいいですか。
ストーリーからで大丈夫です。始めた理由を言葉にすると、自分が誰の役に立ちたかったのかがはっきりします。その相手が決まってはじめて、独自のウリを「誰にとっての1番か」という形で決められるようになります。
まとめ
真似されたことに気づくと、心がざわつきます。でもそれは、あなたのしていることに価値があるという合図でもあります。
そして本当に守るべきものは、表面の要素ではありません。なぜ始めたのかというストーリーと、なぜあなたから買う理由があるのかというUSP。この2つは、外から持っていけない場所にあります。
今日はまず、4つの問いをノートに書き出すところから始めてみてください。お互いに、お客様にとって価値のあるオンリーワンをつくっていきましょう。
マーケティングの本質×SNSのトレンドを掛け合わせた、SNSからの女性集客を専門としている。14歳でメールマガジンを始め、8ヶ月で20,000人の登録を達成(当時の歴代最年少記録)。個人・法人の500件以上のSNSアカウントを個別に指導。これまでの登壇・研修先は、ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など。全国で延べ15,000名以上へ講演・研修を実施している。詳しいプロフィールはこちら。