執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)
発信の文章は、書きたいことから書くのではなく、読み手に何を感じてほしいかを決めてから書きます。直木賞作家・山本文緒さんが語っていた小説の書き方に、その順番がそのまま表れていました。
さらにもうひとつ加えたいのが、読み手と自分の関係をイメージすることです。友人のような距離なのか、教える立場なのか。それが決まると、敬語かどうかも、断言するかどうかも自然に決まっていきます。
- 小説家が語っていた、書きはじめる前に決めていること
- 趣味の発信と、集客につながる発信の分かれ道
- 読み手との関係性によって、文体がどう変わるか
- 敬語かタメ語かを、感覚ではなく理由で選ぶ考え方
- 情報を受け取るときに持っておきたい視点
直木賞作家・山本文緒さんが語っていた、小説の書き方
ある日たまたまテレビをつけたとき、NHKの『あさイチ』に直木賞作家の山本文緒さんが出演されていました。7年ぶりの長編小説『自転しながら公転する』を刊行された記念の回で、これまでの人生や、小説を書き上げるときのお仕事の様子までインタビューされていました。
最近は小説を読む機会がだいぶ減ってしまったのですが、以前に山本さんの作品を2冊、拝読したことがあります。その中で語られていた「書き上げるときのコツ」が、小説ではないにせよ私も大切にしていることでしたので、ぜひシェアさせてください。

インタビューによれば、山本さんは小説を習ったことがなく、独学で書きはじめられたそうです。そして書くときには、次の順番で進めていくとお話しされていました。
細かいストーリーではなく、まず全体の構成から考える
最初に手をつけるのは、細部ではなく全体だそうです。私は小説家ではないので、ここは「なるほど」と思う視点でした。
一つひとつの場面で、読み手の感情を想像して埋める
たとえば、この場面では主人公に対してもどかしく感じてほしい、というように。出来事より先に、読み手の感情を置いていくのです。ここには特に深く納得しました。
その感情に合う場面を、細かく書き上げていく
感情が決まってから、それに合う描写を書いていく。つまり文章は、思いつくままに書き進めるものではなく、設計してから埋めていくものだということですね。
※メモを取りながらではなく流し聞きのような形で拝見したため、番組内で山本さんがお話しされていた正確な表現とは異なります。あくまで私の受け取り方としてお読みください。
山本文緒さんは、2021年10月13日に58歳で逝去されました。1999年に『恋愛中毒』で吉川英治文学新人賞、2001年に『プラナリア』で直木賞を受賞。この記事で触れている『自転しながら公転する』は、2021年に島清恋愛文学賞と中央公論文芸賞を受賞されています。心よりご冥福をお祈りいたします。
SNSでも「何を感じてほしいか」を決めてから書く
この考え方は、Instagramでもブログでも、そのまま使えます。けれど実際のところ、ここまで想像して書いている方は、あまりにも少ないのが現状です。
書きたいことを書いて発信する。表現することを楽しむ。それ自体はとても素晴らしいことです。発信は最高のインプットにもなります。
ただ、集客したいという目的があるのなら、もう少しプラスαをしないと結果はついてこないのです。
趣味の発信と、集客につながる発信の分かれ道
そのプラスαとは、書きはじめる前にこう問いかけることです。
「この文章を通して、理想のお客様に何を感じてほしいのか?」
ここまで考えられるかどうかで、趣味として発信を楽しむのか、ビジネスとして集客につなげるのか、雲泥の差が生まれます。どちらが良い悪いではなく、目的が違えば、書きはじめる場所も変わるということなのです。
これから発信をするときは、相手に感じてほしい感情を先に決めてみてくださいね。
発信者である自分と、読み手の関係性まで想像する

発信をするうえで、さらにもうひとつ加えていただきたいことがあります。それは理想のお客様と自分の関係をイメージすることです。
関係性が決まると、文体も決まる
これだけでは分かりにくいので、補足しますね。友人のように気さくな関係なのか、自分が先生として教える関係なのか。そういった距離感のことです。
たとえば友人のような関係を選ぶなら、敬語よりタメ語のほうが合うでしょう。若い女性が使えば可愛らしさが出ますので、インフルエンサーの方にはこのタイプが多いですよね。
逆に、圧倒的に結果を出していて「私についてきて」と堂々としている方は、断言して書くことが多く、ときには何かを否定することもあります。ダメなものはダメときっぱり伝え、白黒をはっきりさせて、価値観の合う人を集めていくのです。
私の場合は、どちらでもありませんでした
では私はどうかというと、実はどちらもしっくりこないのです。お客様をお客様として見るというよりは、一人の対等な人として関わりたいというスタンスでいます。
これはもしかしたら、学生時代からまったくリーダータイプではなかったことが関係しているのかもしれません。小柄で童顔なせいか、部活では後輩からもあまり先輩と認識されないような立ち位置でした。自分が引っ張るというキャラクターではなかったのです。
とはいえ、遠慮をしてお客様にとってマイナスになっては元も子もありません。かといって、生意気になることがすべての解決策でもないでしょう。ですから、伝えるべきところはしっかり伝える。謙虚と遠慮を区別することを、いつも心がけています。
私のところに来てくださるお客様、特にコースレッスンのように複数回にわたって関係が続く方は、みなさんとても謙虚で、人として素晴らしい方ばかりです。ですから私はあくまで集客やPRという専門分野の講師であって、それ以上でしゃばりたくはありません。人として学ぶことのほうが多く、いつも感謝の気持ちでいっぱいです。
リズムを作るために敬語を外して言い切ることはありますが、基本は敬語で敬意をお伝えしたいと思っています。そして人生経験がまだ足りないからこそ、人を小馬鹿にするような発信はしないと決めています。
「断言」なのか「その人の主張」なのかを見分ける
それでも、私がふんわりとしか表現しないせいで、うまくいくはずのものがうまくいかなかった。そんな生徒さんは絶対に出したくありません。ですから、自信を持って言えることは、自信を持って断言していきます。
そのうえで、これは私の発信に対しても、ほかの情報に対しても同じなのですが、受け取るときにこの視点を持っていただきたいのです。
- 断言として言っているのか:多くの場合に当てはまる、根拠のある話なのか
- その人の主張として言っているのか:その方の経験や価値観から出ている話なのか
この2つを分けて読めるようになると、情報に振り回されにくくなります。私自身も、この視点は常に大切にしていきたいと思っています。
よくある質問(FAQ)
「何を感じてほしいか」は、どうやって決めればいいですか?
読み終えたあとに、その方にどうなっていてほしいかから逆算します。安心してほしいのか、動き出してほしいのか、自分にもできそうだと思ってほしいのか。ひとつに絞るほど、言葉は決まりやすくなります。
敬語とタメ語、どちらで書くのが正解でしょうか。
どちらにも正解はなく、理想のお客様との関係性で決まります。友人のような距離を望むならタメ語が合いますし、専門家として頼られたいなら敬語が合います。大切なのは、途中で揺れないことです。
断言したほうが伸びると聞きました。無理にでもそうすべきですか?
無理をする必要はありません。ただ、遠慮のせいで読み手が動けなくなるのは避けたいところです。自信を持って言えることだけは言い切る。その線引きができていれば十分です。
趣味の発信と、集客のための発信は両立できますか?
できます。ただ、同じアカウントで混ぜるなら、1投稿ごとにどちらなのかを自分で決めておくことです。目的が曖昧なまま書いた投稿が、いちばん届きにくくなります。
まとめ
小説も発信も、書きはじめる前に決めていることがあります。それは、読み手にどう感じてほしいかということでした。
そしてもうひとつ、読み手と自分がどんな関係でありたいのか。ここが決まると、敬語かどうかも、断言するかどうかも、迷わなくなります。
発信をするときは、お客様との関係を考えてみることも、ぜひ付け加えてみてくださいね。本日もご一読をありがとうございました。
マーケティングの本質×SNSのトレンドを掛け合わせた、SNSからの女性集客を専門としている。14歳でメールマガジンを始め、8ヶ月で20,000人の登録を達成(当時の歴代最年少記録)。個人・法人の500件以上のSNSアカウントを個別に指導。これまでの登壇・研修先は、ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など。全国で延べ15,000名以上へ講演・研修を実施している。詳しいプロフィールはこちら。
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