執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)
※この記事は、2023年12月25日、開業届を出してからちょうど10年の節目に書いたものです。
事業を長く続けるために大切なのは、①すごい人ではなくお客様を見る ②自分の自信の種を見つけて伸ばす ③勝つより「負けない経営」をする、の3つです。
個人事業主・フリーランスとして11年目を迎えた私自身の実感をまとめました。あわせて、好きなことで起業するためのSNS活用のポイント4つと、集客ができる起業家が「しない」こと、集客における絶対的なNGもお伝えします。
- 長く事業を続けるための心構え3つ
- エキスパート理論と「負けない経営」の考え方
- 好きなことで起業するためのSNS活用4つのポイント
- アドバイスが食い違ったときの考え方と、集客の絶対的なNG
開業届を出したのは2013年のクリスマス
今日は私にとって大切な日だったことを、ふと思い出しました。実は10年前の今日、開業届を出しに行ったのです。
当時の私はビジネスの駆け出しで、学生の私に経営を教えてくれた師匠が、12月の勉強会で「これからビジネスを本気でやるつもりの人は、開業届を早く出して!」と話していました。「みんなも出しているから私も」というノリだった気がする一方で、「就職先の内定も辞退したし、もう自分でやるしかない道にしたんだ」という覚悟があったことも覚えています。
せっかくならクリスマスにしようと、12月25日に税務署へ行き、屋号は『上村菜穂事務所』にしました。『フルネーム+事務所』は、師匠やコミュニティの仲間が選んでいたから私も、という選択でしたが、「この屋号ならやることを何でも変えられる(たとえば『PR NET』という屋号で飲食店は違和感がある)」という師匠の言葉にもメリットを感じていました。
開業届は、原則として事業を開始した日から1か月以内に、納税地の税務署へ提出します。これから事業を始める方は、国税庁のホームページや税理士など専門家の情報で最新のルールを確認してください。
個人事業主として開業届を出してから10年、2021年3月には株式会社PR NETを設立し、個人事業主の期間を含めると事業は11年目に入りました。10年続く事業は多くないといわれるなかで、ひとつの節目を越えられたのはうれしい一方、比べるべきは人ではなく自分なので、やるべきことは変わらないという気持ちです。
そこで今回はいつもの集客ノウハウとは少し違い、年末ということもあり、起業家として事業を長く続けるために必要なことを、11年目の私の視点で書きます。
長く事業を続けるための心構え3つ
結論から言うと、大切なことは次の3つです。
- モチベーションにするならすごい人を見ていい。でも自信を失うなら、すごい人ではなくお客様を見る
- 自分にとって自信があることを見つけて伸ばす。自分に厳しくする期間も必要
- 長く事業を続けるには、勝つこと以上に負けないことが大切
すごい人ではなく、お客様を見る(エキスパート理論)
事業をしていれば、すごい人にはいくらでも出会います。私も「11年目になりました」と言いながら、私よりすごい成果を出している人はいくらでもいると思います。でも、自分よりすごい人と比べて「私なんて全然ダメだから、語れることなんてない」と思ってしまったら、いつまで経っても発信できることがなくなってしまいます。
憧れやロールモデルを見つけて「私も近づけるように頑張ろう!」と思うのは大事ですが、比べて悲観しても現実は何も変わりません。それよりも、自分が価値を提供できる相手(今の、そして未来のお客様)を見ましょう。
ここで私が一番衝撃を受けたと言っても過言ではないのが、ビジネスを教えてくださった経営者の方から聞いたエキスパート理論です。
| プロフェッショナル | エキスパート | |
|---|---|---|
| どんな人か | 特定の分野で、この道何十年の実績がある一流の人 | 特定の分野で、目の前のお客様より少しできる人 |
| 極端なたとえ | 掛け算九九を教える東京大学の数学科の教授 | 2年生に九九を教えて、できるようにしてあげる3年生 |
| 強み | 圧倒的な知識と実績 | つい最近のことなので、初心者の気持ちがわかり、できるようになった道のりを伝えやすい |
ビジネス初心者がビジネスをスタートするのに、いきなりプロフェッショナルと比較しようとしないこと。エキスパートとして、お客さんのことだけ考えて。
この理論を知っていたから、焦る気持ちが生まれたときも、弱い心が揺らがない方をまっすぐ見ることができました。事業を続けられない理由には、努力や習慣、タイミングもあるでしょう。でも、マインドで負けてしまって続けられない人も、決して少なくないと思っています。もちろん事業をすることがすべての人の幸せではありませんが、心が折れてしまう前にエキスパート理論を思い出せたら、長く続けられる人が増えると思うのです。
自分の自信の種を見つけて、伸ばす
起業のいいところは、時間や働く場所の〝自由〟です。私も平日に素敵なお店でランチをしたり、美術館を訪れたりと、自由に決められる幸せをいつも感じています。
でも、自由と責任は表裏一体です。自由を得るまでの準備期間は、人の何倍もの努力が大切だと思います。量と質のどちらが大事かは永遠のテーマですが、事業の始めたてに「私は質を大切にしているから」と量を怠るのは危険です。本人が思っている〝質〟そのものがズレていることも少なくないからです。
子育てや介護で家族の時間が必要な人、本業の勤務時間が長い人、体力に不安がある人など、状況は人それぞれです。無理をして体を壊しては続きません。そのうえで、朝30分早く起きる、夜に30分だけ「これをやる!」と決めて守るなど、自分との小さな約束をひとつ決めて守り続けることが大切です。
事業を始めたばかりの頃、「90日間は毎日ブログを書く」と決めて、書けない日は仮眠をとりながらでもやり切りました。この90日で、風向きが変わりました。
ただ、厳しくするだけでは心が折れてしまいます。継続のコツは、自分にとって自信があることを見つけて、それを信じて伸ばすことを同時に行うこと。何でもいいので、自分のいいところをひとつ見つけましょう。
- 人より細かいところまで気が利く、変化に気づける
- アイデアがどんどん閃く
- センスがいいとよく言われる
- 相手の気持ちがよくわかると、共感力をほめられる
ちなみに私の場合は〝体力〟でした。インドアなので意外と言われますが、大学まで週5日の部活をしていたTHE・体育会系です。ただ、陸上競技部ではずっとビリでした。50mは7.3秒で走れるようになりましたが、大学まで陸上を続ける女子はみんな6秒台が当たり前。数字ですべてが表れる世界で、ダントツのビリだったのです。
それでも、「ビリで悔しくても逃げずに続けた忍耐力がある」「ほぼ週6の部活生活で体力がある」「ビジネスは体を使うわけではないから、ダメージは半分以下!大丈夫!」と、成果が出なかった中でも得たものに目を向けて、強制的にでも自信に変えて事業をしてきました。
「あのとき大変だったけど、こんなふうに頑張ったな」「こういう言葉でよくほめられるな」と思い返して、自信にしてみてください。どんなエピソードも、それを自信と思えるかどうかは自分しだいです。
勝つこと以上に「負けない経営」をする
事業を続けるには、売上があり、手元にキャッシュがあることが前提です。だからこそ勝負に出たくなる気持ちも自然ですが、キーワードは負けない経営。私もビジネスを教わったときに「勝つ経営」ではなく「負けない経営」という言葉を教えてもらいました。一発逆転のホームランではなく、小さなヒットを日々大切にすることです。
| 負けない経営のポイント | 具体的には |
|---|---|
| 身の丈に合わないお金を使わない | お客様が来るかわからない段階で店舗の内装などにお金をかける前に、「月にいくら売り上げ、いくら利益が出るか」「何か月で投資を回収できるか」を必ず計算する。原価率を考え、利益率の高い商品を選ぶことも大切 |
| 期待を込めすぎて計画しない | 「行きますね!」と言って来ない人はたくさんいる。多くの人はその場で断るのが苦手なだけ。「来てくれるかも」「買ってくれるかも」を全部見込みに入れるのはリスクになる |
| 1回きりかリピートかを見分ける | 友人や知人が買ってくれても、1回なのかリピートなのかで、誤差ではなく〝かなり大きく〟違う。1か月の売上がいいだけでは不安定なので、次の一手を考えておく |
好きなことで起業するためのSNS活用4つのポイント
「好きなことで少しずつ仕事ができているけれど、まだ1本に絞れるほどの収入はない」「お客様は0ではないけれど、独立まではイメージできない」。そんなときのSNSの使い方を、4つのポイントにまとめました。
起業家としてのプロフィールを整える
対面でも自己紹介は欠かせませんが、ネットでの出会いでまず見られるのはプロフィールです。私のホームページでもよく見ていただけるのはプロフィールのページですし、自分がお客様側のときも、お金を払う相手がどんな人か気になりますよね。
どんなに忙しくても、自分の大切にしていること、これまで積み重ねてきた経験、今、誰のためにどんなサービスを提供できるのかを盛り込んで、プロフィールを整えましょう。
初めて見た人にもわかる集客導線をつくる
「当たり前でしょ!?」と思うかもしれませんが、案外見落とされています。自分のホームページやSNSは見慣れているのでどこに何があるかわかりますが、大切なのは初めて見た人にもわかりやすいことです。
- 講座の案内は、クリックしたくなるか
- 商品やサービスに説得力があるか
- 場所・時間・値段は明記してあるか
- 講師は誰で、なぜこの人から学ぶといいのか
- 申し込みフォームはどこにあるか
- 申し込みの流れはシンプルか(大量のアンケートを書かされないか)
- 申し込んだあとの流れがイメージできるか
SNS発信のお悩みについては、SNS発信の3大悩み|読まれない・ネタがない・タイトルに困るときの解決策でも詳しく書いています。
スキルに加えて、マーケティングを学ぶ
集客に欠かせないのがマーケティングです。マーケティングとは、商品やサービスが売れるまでの一連の流れのこと。言いかえると、売りたい商品を誰に向けて、どのように売上につなげるか。そのためのニーズは何で、何をするべきかを考えて実行することです。
その分野の知識や資格だけでは、紹介でお仕事が回る人以外は止まってしまいます。マーケティングを知っていれば、お客様にどうしたら買ってもらえるかの戦略を考えて実行でき、学んだ知識や経験を生かして、より多くの人を喜ばせることができます。
以前、内閣府とも仕事をしているマーケターの方とお話ししたとき、「天然のマーケターに共通することがあるんだけど、何だと思う?」と聞かれました。答えは、「いい人」ということ。この一言に、マーケティングの本質が隠れているような気がします。
お客様がどうなれるか(before・after)をはっきりさせる
お客様はお金と時間を使うので、「この人のサービスを受けると自分はどうなれるのか?」が常に気になっています。それを伝えるのはガツガツした売り込みではなく、むしろ親切だと私は思います。
たとえば私は以前、2万5,000円ほどで『卑弥呼』のパンプスを買いました。決め手は、「スニーカーパンプス」と呼ばれるほどの歩きやすさと、ビジネスでもプライベートでも服を選ばないデザイン。21.5cmで選べるものが少ないなか、買ったあとのライフスタイルが鮮明に描けたから、即決できたのです。
あなたの商品を買ったあと、お客様はどうなれるのか。ひとりで行き詰まったときは、誰かに相談してみるのもおすすめです。あわせて個人事業主(フリーランス)のブランディング|無名から選ばれる3つの戦略も読まれています。
集客ができる起業家が「しない」3つのこと
先日、PR塾の受講生さんとのお食事会で、LPの話題になりました。一緒に講師をしている顧問と私の意見が、180度違ったのです。
顧問からは共感することも学ぶことも多いのですが、歩んできた人生が違うので、意見が必ずしも同じとは限りません。受講生さんには初回の講義で「2人の考えが違うのは〝選択肢が増えた〟と捉えて、その中から自分のベストを選んでください。それでもわからなければ相談してください」とお伝えしています。
「講師によって言っていることが違う」というお悩みは、どのスクールでも起こることです。私も500件以上のSNSアカウントを個別に指導し、延べ15,000名以上の方に講演してきたなかで、「情報収集していたらわからなくなりました」というご相談は、何年経っても尽きることがありません。
私がビジネスを学んでいたコミュニティでも、同じことが何度もありました。営業がうまくいかず売上に困っていたとき、Aさんは「強みが違う人と組んだらいい」、Bさんは「理念に共感する人と組んだらいい」とアドバイスをくださいました。
先にAさんのアドバイスを実行しましたが、お客様からすると同じサービスなのにまったく違う2人が出てくることで混乱させてしまい、成果を実感できませんでした。そこでBさんのアドバイスどおり理念に共感する人と組むと、成果を実感できたのです。コミュニティではAさんのやり方でうまくいっている人のほうが多かったので、Aさんのアドバイスが悪いわけではありません。私には当てはまらなかった、ということです。当時は目先の数字として厳しかったのですが、なぜダメだったのかを体感できたことは、今も生きている財産です。
では、集客ができる起業家が「しない」ことは何か。しっくりくる答えは3つあります。
考えることを放置しない
自分の人生に責任を持てるのは自分だけです。「◯◯さんが言っているからこうしよう」と主導権を人に預けるのではなく、「Aさんの要点はこれ、Bさんの要点はこれ。私の場合はまずこれをやってみよう」と、自分で考えて、納得のいく答えを出して実践するのがおすすめです。
他責にしない
アドバイスをくれる人を選んだのも自分、というスタンスで捉えることが大事です。他責にしないと決めるだけで、うまくいかないことがあっても「この結果をどうしたら長期的な資産にできるだろう?」と視点を変えられます。長い目で見れば、失敗ではなく一つの経験だったと割り切れるほうが、得られるものは大きいですよね。
絶対的なNGをしない
今回いちばんお伝えしたかったのが、これです。私はよくダイエットでたとえますが、規則正しい生活で痩せる人もいれば、ジム通いで痩せる人もいて、成功する方法は山のようにあります。でも、極端な食べすぎや、逆に栄養をとらなさすぎることなど、「これをしたら失敗する」ことは共通しています。
専門家が「◯◯は絶対にしてはいけない」と言うのは何かを見極め、それに当てはまらない方法の中から、自分に合ったやり方を探せばいいのです。
集客における絶対的なNGとは?
いくつかありますが、代表的なものを2つ挙げます。
信頼感や安心感を得られないプロフィール写真
プロに撮影してもらった写真は、お客様からの印象もよく、安心感を持ってもらいやすいです。ただ、イラストやお面をかぶったアイコンで成功している人がいないわけではありません。NGなのは、信頼感や安心感を得られない写真です。
プロに撮ってもらうのに勇気がいるなら、過度なアップや下からの角度の自撮りにするより、イラストを描いてもらうのも一つの手です。ペットの専門家でない限り、ペットの写真をアイコンにするのもビジネスではおすすめしません。
自分目線の一方的な発信
冒頭のLPの話に戻ると、顧問は「LPを作ることでお客さんのことを考えられるので成長できる」という意見、私は「LPを作る前に、無料や低価格の場でちゃんとお客様の声を聞いてから作ったほうがいい」という意見でした。
顧問は人間心理をとてもよく理解されている方で、人と向き合ってきた経験から「数か月後に当たっていた…!」ということが何度もありました。一方で私がお客様の声を聞くことを勧めるのは、自分でそうしてよかった経験に加え、SNS集客の講師として、前向きさゆえに自分に都合よく考えてしまう方を何度も見てきたからです。
他の人から見ると独自性がわかりにくいのに「唯一無二で、この価格で買ってくれる人がたくさんいる」と思い込んでしまったり、実在しない人を「これが私のペルソナです!」と言い切ったり。「私なんか…」と悲観して進めないよりはいいかもしれませんが、商売は買ってくださるお客様ありき。「本当に必要とされているか?」「何に価値を感じてくださるか?」を考えるのは必須です。
業界でお客様と関わってきた人や、人の気持ちを汲み取るのが上手な人は、経験からくる〝直感〟が磨かれています。そうでないときは、直感を磨くためにも人と関わることが大切です。つまり、LPでもSNSでも、自分目線の一方的な発信(言いたいことを一方通行でまとめたもの)は絶対的なNGと言えるでしょう。
ペルソナは「実在しそうな一人」を、お客様の声をもとに描くことが大切です。決め方はペルソナとターゲットの違い|集客できるペルソナの決め方とよくある間違い3つで解説しています。
よくある質問
自分よりすごい人と比べて落ち込んでしまいます。どうすればいいですか?
憧れやロールモデルをモチベーションにするのはいいことですが、比べて悲観しても現実は変わりません。「目の前のお客様より少しできる人(エキスパート)」として、今のお客様に何を提供できるかに目を向けてみてください。
「負けない経営」とは、具体的に何をすればいいですか?
身の丈に合わないお金を使わないこと、「来てくれるかも」「買ってくれるかも」を見込みに入れすぎないこと、1回きりの売上とリピートを分けて考えることの3つがポイントです。投資をするときは、何か月で回収できるかを必ず計算しましょう。
講師やコンサルタントによってアドバイスが違うときは、どうすればいいですか?
どちらが正しいかではなく、選択肢が増えたと捉えましょう。それぞれの要点を整理したうえで、自分の状況に合うほうを自分で選んで試すことが大切です。成功する方法はたくさんありますが、絶対にしてはいけないことは共通しています。
集客で絶対にやってはいけないことは何ですか?
代表的なのは、信頼感や安心感を得られないプロフィール写真と、自分目線の一方的な発信です。お客様の声を聞き、「本当に必要とされているか」「何に価値を感じてもらえるか」を考えて発信しましょう。
まとめ
起業家として事業を長く続けるための心構えは、次の3つです。
- すごい人ではなく、お客様を見る(エキスパート理論)
- 自分の自信の種を見つけて伸ばす。自分に厳しくする期間も必要
- 勝つこと以上に「負けない経営」をする
そして集客では、考えることを放置せず、他責にせず、絶対的なNGを避けること。比べるべきは人ではなく過去の自分です。一歩ずつ、長く続けていきましょう。
マーケティングの本質×SNSのトレンドを掛け合わせた、SNSからの女性集客を専門としている。14歳でメールマガジンを始め、8ヶ月で20,000人の登録を達成(当時の歴代最年少記録)。個人・法人の500件以上のSNSアカウントを個別に指導。これまでの登壇・研修先は、ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など。全国で延べ15,000名以上へ講演・研修を実施している。詳しいプロフィールはこちら。