執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)

💡 結論サマリー(30秒でわかる本記事の答え)

SNS発信の目的を、「もっと目立つため」から「必要としている人に届けるため」へ置き直すこと。それだけで、投稿の内容も、数字との付き合い方も、少しずつ変わっていきます。

20年前、日本中に商品を知ってもらうには、億単位の広告費が必要でした。今は、その「届ける力」をスマートフォン1台で持てる時代です。だからこそ、力の使い道を先に決めておくことが、以前よりも大切になっているのです。

📖 この記事でわかること
  • 2006年のシャンプーCMに投じられた広告費から見える、この20年の変化
  • 「SNSがなかった平成は平和だった」と感じてしまう、本当の理由
  • 発信力を誰もが持てる今、一人起業家が最初に決めておきたいこと
  • いいね・再生回数といった数字との、健やかな付き合い方

1. 「SNSがなかった平成は平和だった」と感じるのはなぜでしょうか

このお盆休み、SNSを見ていて、こんな言葉に多くの共感が集まっていることに気がつきました。

「SNSがなかった平成の時代って、平和だったなあ」

もちろん、平成に問題がなかったわけではありません。事件もありましたし、報道されるスキャンダルもありました。ハラスメントについては、今のほうがずっとシビアになったという声もよく耳にします。

それでも、今とは何かが違ったような気がするのです。

そんなことを考えるきっかけになったのが、SNSで再び話題になっていた、20年前のシャンプーのCMでした。

2. 20年前、日本中に知ってもらうために約50億円がかかっていました

2006年、資生堂から「TSUBAKI」というシャンプーブランドが発売されました。覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。「日本の女性は、美しい。」というコピーとともに、当時の人気女優が次々と登場する、とても華やかなCMです。

最近、このCMがまたSNSで話題になっていました。そこで「このCMに50億円かかっていた」という投稿も見かけました。

正確には、CM1本の制作費が50億円だったわけではありません。当時、資生堂がTSUBAKIの発売にあたり、年間の広告宣伝費として約50億円という、同社史上最大級の予算を投じたと報じられています。

テレビCMを流し、雑誌に広告を出し、店頭でも大きく展開して、日本中の人に新しいブランドを知ってもらう。それだけのお金が必要だった時代です。今から、ちょうど20年前のことでした。

3. いま、その「届ける力」はスマートフォン1台の中にあります

2006年には、Instagramはまだ存在していません。Twitter(現在のX)が海外でサービスを始めたのがこの年で、日本語版が登場したのは2008年でした。YouTubeの日本語版も、2007年からです。

当時、企業が日本中の人に一気に情報を届けようとすれば、テレビ、新聞、雑誌といった大きなメディアの力を借りるしかありませんでした。当然、そこには大きなお金が必要でした。

それから20年。私たちはスマートフォン1台あれば、無料でInstagramやX、TikTok、YouTubeから発信できます。しかも、たった一つの投稿が、10万人、100万人、ときにはそれ以上の人へ届くこともあります。

20年前なら、企業が億単位の広告予算を使って手にしていた「大勢の人に届ける力」を、今は一人の人間がポケットの中に持っている。改めて考えると、すごいことなのです。

比較項目 2006年ごろ 2026年のいま
届ける手段 テレビ・新聞・雑誌などのマスメディア スマートフォン1台とSNSアカウント
必要な費用 億単位の広告宣伝費 0円から始められる
発信できる人 大きな予算を持つ企業 個人・小さな会社を含めた、誰もが
届く範囲の決まり方 買った広告枠の大きさ 内容への反応(保存・共有・滞在時間など)
結果が見えるまで 調査や売上で、後から分かる 投稿した直後に、数字で分かる

4. SNSは、小さな会社にも一人起業家にもチャンスをくれました

私はSNS集客を仕事にしているほど、SNSから多くの恩恵を受けてきました。ですから、SNSがない方がいいとは思っていません。

むしろSNSがあることで、小さな会社にも、個人のお店にも、一人で仕事をしている方にも、大きなチャンスが生まれました。

広告費を何千万円、何億円とかけられなくても、自分たちの言葉で伝えることができるのです。

  • 「こんな商品を作っています」
  • 「こんな思いで仕事をしています」
  • 「こんなことで困っている方のお役に立てます」

私自身も、SNSを通じてたくさんのお客様やお仕事に出会ってきました。そう考えると、本当にいい時代になったと思うのです。

ただ、その一方で、誰もが「人から注目される力」を持てる時代にもなりました。ここには少し、怖さもあると感じています。

5. 「注目されること」が、数字で見えるようになりました

以前から、「有名になりたい」「人から注目されたい」と思う方はいらっしゃったと思います。でも今は、その注目が数字ではっきり見えます。

再生回数。いいね。リポスト。コメント。フォロワー数。

投稿するとすぐに、「どのくらいの人に見られたのか」「昨日より伸びたのか」が分かってしまうのです。

そしてSNSでは、ときに、穏やかな発信よりも驚くような発信が、普通の意見よりも過激な意見が、人を安心させるものよりも怒りや違和感を生むものが、大きく広がることがあります。

すると、こんな流れも起こります。

  1. 強い言葉で注目される
  2. 数字が伸びる
  3. もっと強いことをする
  4. さらに注目される

5-1. 一つの出来事が、何百万人もの「議論の材料」になる構造

先日も、ある番組をめぐる議論がSNS上で一気に広がっているのを目にしました。

誰かが何かをする。その場面が配信される。誰かがコメントする。その一部分が切り取られてSNSに載る。それを見た人が意見を書く。別の人が反論する。その反論が、また引用される。

こうして、出来事そのもの以上に大きな波になっていきます。

私がここで気になったのは、個別の出来事の是非よりも、一つの出来事が瞬く間に何十万人、何百万人もの「議論の材料」になっていく、今のSNSの構造のほうでした。

6. 平成が平和だったのではなく、「みんなで見ていなかった」のかもしれません

ここまで考えて、最初の「SNSがなかった平成は平和だったなあ」という自分の感想を、少し言い直したくなりました。

平成が、特別に平和だったわけではないのです。

きっと昔にも、非常識な人も、問題のある出来事も、誰かを傷つける言葉も、たくさんあったはずです。

ただ、それを今ほど、何百万人もの人が同時に見ていなかった。知らなくてもよかった出来事まで、自分のスマートフォンに流れてくることもありませんでした。そして私たち自身も、自分の怒りや違和感を、その場ですぐ世界へ発信できる環境にはなかったのです。

SNSによって問題が生まれたというよりも、これまで見えていなかったものまで見えるようになり、誰もがそこに参加できるようになった。そう考えるほうが、近いのかもしれません。

7. だからこそ、SNS発信の目的を先に決めておくのです

20年前なら、日本中に何かを伝えようと思えば、億単位のお金が必要になることもありました。今は、スマートフォン1台で発信できます。これは本当に素晴らしいことです。

だから私は、この力を「もっと目立つため」だけに使うのではなく、「必要としている人に届けるため」に使えたらいいなと思っています。

100万回見られることより、必要としてくれている100人に届くこと。

一瞬、大勢の注目を集めることより、一人ひとりとの信頼を積み重ねること。

SNSではどうしても、「バズるには?」「フォロワーを増やすには?」に目が向きやすくなります。もちろん、お仕事としてSNSを使うなら、数字を見ることも大切です。でも、その数字の先には、必ず人がいるのです。

「どうすれば注目されるか」の前に、「何のために発信するのか」を忘れない。誰もが大きな発信力を持てるようになった今だからこそ、以前よりも大切になっていることなのかもしれません。

7-1. 発信の目的を、一文にしてみましょう

  1. Step 1:届けたい方を、大勢ではなく「一人」だけ思い浮かべる
  2. Step 2:その方が読み終えたあと、どうなっていたら嬉しいかを書き出す
  3. Step 3:「私は◯◯な方が△△できるように発信します」と、一文にまとめる

この一文があると、話題のニュースに乗るかどうか迷ったときも、数字が伸びなかった日も、進む方向を見失いにくくなります。

8. よくある質問(FAQ)

Q
フォロワーが少なくても、SNSからお仕事につながるのでしょうか。
A
つながります。一人起業家のSNSは、数万人に浅く知られることよりも、必要としている数十人に深く信頼されることのほうが、ご依頼に直結しやすいのです。大切なのは人数ではなく、「誰に届いているか」です。
Q
SNS発信の目的は、どのように決めればよいのでしょうか。
A
届けたい方を一人だけ思い浮かべ、その方が読み終えたあとにどうなっていたら嬉しいかを書き出してみてください。それを「私は◯◯な方が△△できるように発信します」と一文にまとめると、投稿のたびに立ち返れる基準になります。
Q
話題になっているニュースについて、意見を投稿してもよいのでしょうか。
A
一度、ご自身の発信の目的に照らしてみてください。届けたい方の役に立つのであれば書く意味があります。反対に、注目が集まりそうだからという理由だけなら、少し時間を置くほうが安心です。特定の個人を批判する内容は、思いがけず大きく広がり、ご自身のブランドを傷つけることもあります。
Q
いいねや再生回数の数字は、気にしなくてよいのでしょうか。
A
お仕事としてSNSを使うなら、数字は大切な手がかりです。ただ、見る順番を変えてみてください。「どれだけ多くの人に見られたか」よりも、「届けたい方が保存してくれたか、問い合わせにつながったか」を先に見ると、数字に振り回されにくくなります。

9. まとめ

  • 20年前、日本中に届けるには億単位の広告費が必要でした
  • 今は、その「届ける力」をスマートフォン1台で持てる時代です
  • 同時に、「注目されること」が数字で見えるようになりました
  • だからこそ、「どうすれば注目されるか」より先に、SNS発信の目的を決めておくことが大切です

平成の懐かしいCMを見ながら、そんなことを考えたお盆休みでした。

今週も、素敵な一週間になりますように。

著者プロフィール|上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役)

マーケティングの本質×SNSのトレンドを掛け合わせた、SNSからの女性集客を専門としている。14歳でメールマガジンを始め、8ヶ月で20,000人の登録を達成(当時の歴代最年少記録)。個人・法人の500件以上のSNSアカウントを個別に指導し、全国で延べ15,000名以上へ講演・研修を実施。

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