執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)
提供価値は「思い × 強み × お客様に起きる変化」の掛け算です。足し算ではないので、3つのうちどれかひとつが空欄のままなら、他がどれだけ優れていても伝わる価値はゼロになってしまいます。
多くの方の発信が止まるのは、3つ目の「お客様に起きる変化」だけが、自分の内側を探しても出てこないから。この言葉は新しく考えるのではなく、すでにいただいた感想やご相談の言葉から集めます。
- 「同業の誰に貼りつけても成立するプロフィール」になってしまう理由
- 思い・強み・お客様に起きる変化という、価値の3つの段階
- 3つ目の言葉を、自分の頭の中ではなくどこから集めるか
- 「不が減る」「快が増える」という、変化の二つの方向
先日、セラピストさん向けの講義資料を準備している中で、みなさんからよくいただくご質問を思い返していると、「価値」について気づきがありました。今日は、プロフィールや発信での提供価値の書き方について、その話をシェアしたいと思います。
たとえば、こんな言葉です。
- 「お客様に寄り添います」
- 「豊富な経験を生かしてサポートします」
- 「品質にこだわっています」
どれも嘘ではありません。書いたときは、心からそう思って書いたはずなのです。
屋号とお顔写真を外しても、成立してしまう文章になっていないか
ご自身のプロフィール文を、もう一度読み返してみてください。そこに書かれている言葉から、屋号とお顔写真を外したとして。
それは、同じ業種の別の誰かのプロフィールに、そのまま貼りつけても成立してしまう文章になっていないでしょうか。
そこでこれまでにいただいたご質問を振り返ると、「自分の思いや強みが、そのまま提供価値になると考えてよいのでしょうか」という問いを、あらためて思い出したのです。
とても本質的な問いだと思う理由
発信がうまくいかないとき、多くの方は書き方や見せ方を先に探します。けれどその手前で、「自分が差し出しているものは何なのか」を確かめようとされていました。その順番でものを考えられることは、それ自体が、長く選ばれ続ける方の共通点だと思っています。
一方で、もうひとつ感じたのは、「そのまま」という言葉のあたりに、業種を問わず多くの方がつまずく地点が隠れているということでした。
思いや強みだけでは、まだ提供価値になっていない
思いや強みは、その人らしさをつくる大切な要素です。私も、商品やサービスを選んでいただくうえで欠かせないものだと思っています。
ただ、思いや強みが存在しているだけでは、まだ「提供価値」になっていないことがあるのです。なぜなら、お客様が最終的に知りたいのは、「それによって、私はどう良くなるのか」「私にとって、どんな意味があるのか」だからです。
価値は、3つの段階で考える
私は、価値を3つの段階で考えると分かりやすいと思っています。セラピストさんを例にすると、こうなります。
足し算ではなく、掛け算です
思い × 強み × お客様に起きる変化 = 提供価値
3つのうちどれかひとつが空欄のままなら、どれだけ他が優れていても、伝わる価値はゼロになってしまうのです。
なぜ、多くの方の発信は最初の段階で止まってしまうのか
ここで、私がずっと不思議に思っていたことがあります。なぜ、多くの方の発信は、最初の段階で止まってしまうのでしょうか。書く力の問題でも、熱意の問題でもありません。理由は、もっと構造的なところにあるように思うのです。
思いと強みは、自分の内側にあります。ですから、机の前で一人でも書けてしまう。けれど、お客様に起きる変化は、お客様の内側にしかありません。自分の中をどれだけ探しても、出てこないのです。
つまり、一人で書けるものだけが並んだ結果、誰のプロフィールにも同じ言葉が載ることになる。書き手の力量ではなく、材料をどこから取ってくるかという仕組みの問題なのだと思います。
3つ目の言葉は、すでにいただいた言葉から集める
では、その3つ目の言葉は、どこから拾えばよいのでしょうか。私がおすすめしているのは、新しく考えることをやめて、すでにいただいた言葉を集めることです。
- お客様から届いた感想メールの一文
- 初回のご相談で、その方が真っ先に口にされた困りごと
- 「なぜ、また来てくださったのですか」と伺ったときの答え
そこにある言葉は、あなたが考えた言葉よりも、次のお客様に届きます。なぜなら、それはすでに一度、実際に誰かの中で起きた変化だからです。
変化には、二つの方向がある
もうひとつ、大切にしていることがあります。変化には、二つの方向があるということです。
- 「不」が減る方向:不安が軽くなる、迷いが減る、失敗しなくて済む
- 「快」が増える方向:理想の状態に近づく、気持ちが上向く、人に見せたくなる
どちらか片方だけを語る発信は、どこか平坦になります。そしてこの「変化」には、技術で解決できることだけでなく、安心感、空間、かけてもらった言葉、過ごした時間の質まで含めてよいのです。
技術や実績で一番になれなくても、価値を語れる。私が、この考え方を大事にしている理由はここにあります。
実際に起きたことだけを、起きた大きさのままで書く
ただ、ひとつだけ気をつけたいことがあります。変化は、大きく言えばよいというものではありません。約束できないことまで書いてしまえば、それは価値ではなく、期待の先取りになります。
そして、その差は、必ずお客様が先に気づかれます。実際に起きたことだけを、起きた大きさのままで書く。遠回りに見えて、これがいちばん早いのだと思います。
価値は、自分とお客様の間に架かるもの
ここまでお伝えすると、「お客様に合わせて言い換えるということですか」と聞かれることがあります。けれど、そうではないのです。これは、自分の中にあるものと、お客様が求めているものの間に、橋を架ける作業です。
合わせすぎて、自分らしさを手放す必要はありません。むしろ、自分の思いや強みが、誰に、どのような形で役立つのかを丁寧に見つけていくことで、その人ならではの輪郭が立ち上がってきます。価値は、自分の内側にあるのではなく、自分とお客様の間に架かるものなのだと思います。
3つの文章を、埋めてみてください
「私は、____という思いを持っています」
「その思いを実現するために、私には____ができます」
「その結果、お客様には____という良い変化が起きます」
1つ目は書けても、3つ目で手が止まるかもしれません。けれどそれは、思いや強みが足りないということではないのです。まだ、お客様の言葉を手元に集めていないだけ。自分の価値は、自分の内側だけを見ていても、なかなか見つかりません。
よくある質問(FAQ)
まとめ
「自分には何があるか」と同時に、「それは、目の前の人にどんな意味をもたらすのか」。そこまで言葉にできたとき、思いや強みは、選ばれる理由へと変わっていくのだと思います。
みなさんの3つ目には、どんな言葉が入りましたか。本日もご一読をありがとうございました。
マーケティングの本質×SNSのトレンドを掛け合わせた、SNSからの女性集客を専門としている。14歳でメールマガジンを始め、8ヶ月で20,000人の登録を達成(当時の歴代最年少記録)。個人・法人の500件以上のSNSアカウントを個別に指導。これまでの登壇・研修先は、ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など。全国で延べ15,000名以上へ講演・研修を実施している。詳しいプロフィールはこちら。
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