執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)
Instagramのアップデートへの対応は、「変化は知る。けれど、すぐには飛びつかない」の距離感がちょうどいい。Instagram自身が、ユーザーの反応を見ながら迷い、戻し、作り直しているからです。
2026年7月には、発表からわずか3日で提供終了になった機能もありました。新機能が出るたびにプロフィールを作り直す必要はありません。機能は届けるための手段であって、誰に何を届けたいのかという土台は変わらないからです。
- Instagramのアップデートが「元に戻る」ことが増えている実例
- 発表から3日で提供終了になったMuse Imageの参照機能で何が起きたのか
- 新機能に飛びつく前に確かめたい、3つの問い
- 仕様が変わっても、発信の土台が変わらない理由
Instagramを使っていると、「また表示が変わった」「新機能が増えたと思ったら、いつの間にかなくなっている」と感じることはありませんか。そして、Instagramのアップデートへの対応をどこまですべきか、迷うことはありませんか。
アップデート後に、元に戻すことが増えている
最近のInstagramを見ていると、アップデートを実施したあと、ユーザーの反応を受けて元に戻したり、仕様を再調整したりすることが増えたように感じます。
2025年9月には、プロフィール画面に並んでいたハイライトの丸いアイコンが、フィードやリールと同じグリッドの並びへ移動しました。ところがそれも束の間、同年11月ごろから従来の丸い表示に戻ったアカウントが出てきたのです。
発表から3日で提供終了になった新機能
2026年7月7日、Metaは新しい画像生成AI「Muse Image」を発表しました。当初発表された機能の一つが、Meta AI上で、公開されているInstagramアカウントを@メンションすると、そのプロフィールの公開写真を参照した画像が生成できるというものでした。
たとえば、第三者が特定のアカウントを指定して、「この人がイベントで登壇している画像を作って」「この人を宇宙飛行士にして」「この人とのコラボレーション画像を作って」といった生成ができる仕組みです。
しかもこの設定は、初期状態でオンになっているオプトアウト方式でした。自動的に対象から外れるのは非公開アカウントと18歳未満のアカウントのみで、成人の公開アカウントは、本人が設定を変えない限りすべて対象に含まれていたと報じられています。
広がった批判の声
この機能に対しては、次のような批判が広がりました。
- 公開していることと、AI画像への利用を許可することは同じではない
- 本人が知らないところで、本人らしい画像が作られてしまう
- 最初から利用可能にするのではなく、本人が許可する方式にするべきではないか
声を上げたのは一般ユーザーだけではありません。大手タレントエージェンシーや全米俳優組合、プライバシー保護団体からも、本人の明確な同意なく肖像を扱うべきではないという抗議が相次ぎました。(私はInstagramが好きなSNSですが、これらの意見には同意です。)
そしてMetaは7月10日、公式発表を更新。ユーザーからの反応を受け、この機能は意図したものにならなかったとして、提供を終了しました。発表から、わずか3日ほどでの撤回です。
このニュースを見て感じた二つのこと
ユーザーの声を聞き、すぐに対応したことはよかった
大きな企業ほど、一度発表した機能を取り消すのは簡単ではありません。問題を指摘されても、そのまま押し通すのではなく、数日で提供を終了した点は、ユーザーの声を聞いてくれる企業なんだという好印象がありました。
なぜ、公開する前に問題を想定できなかったのか
使いにくいボタンを追加した、表示場所を変更した、という程度であれば、実際に使ってもらいながら改善する方法もあるでしょう。けれど、今回は人の顔や写真、本人性、同意に関わる機能です。
一度画像が生成され、保存や転載をされてしまえば、機能を停止しても、その画像をすべて回収できるとは限りません。「まず出してみて、批判されたら戻す」という方法で試してよい領域だったのかは、考える必要があると思います。
Instagramが目指す未来と、ユーザーが求めるもののズレ
最近のInstagramを見ていて感じるのは、Instagramが目指している未来と、ユーザーがInstagramに求めているものとの間に、少しずつズレが生まれているのではないか、ということです。
Instagramを使う人の多くは、好きな人の近況を知りたい。自分の好きなものを見つけたい。共通の価値観を持つ人とつながりたい。自分の活動や商品を、必要な人に届けたい。そのような目的で利用していると思います。Instagramは本来、人と人、人と好きなものをつなぐ場所でした。
しかし現在のMetaは、Instagramを一つのSNSとしてだけではなく、AI、広告、Facebook、WhatsAppなどを含む大きな経済圏の一部として成長させようとしています。
そのため、利用者が求めている「つながり」を意識した機能も出してくれている一方で(興味あり・なしを選べるYour Algorithmなどはとても助かります)、次のような企業側の都合が、アップデートに強く反映されることがあります。
- AIで何ができるか
- 滞在時間をどう延ばすか
- 投稿や写真をどう活用できるか
- 他のプラットフォームとの競争にどう勝つか
もちろん、新しいことに挑戦するからこそ、便利な機能が生まれることもあります。リールも、リポストも、DMの新機能も、最初からすべての人に歓迎されたわけではありません。だから、新しい機能を試すこと自体が悪いわけではありません。
ただ、ビジネスをしていてInstagramを使う私たちにとって、「新しく発表されたから、未来の正解である」「Instagramが推しているから、必ず取り入れるべきである」とは限らないのです。実際にInstagram自身も、ユーザーの反応を見ながら迷い、戻し、作り直しています。
新機能が出るたびに、急いで対応する必要はない
これは、私たち発信者にとっても大切な視点です。新しい機能が出るたびに、プロフィールを全部作り直す。投稿の形式を一斉に変える。それまでの発信方針を捨てる。そこまで急いで対応する必要はありません。
Instagramのアップデートには、次のようなものが含まれているからです。
- 一部の人だけを対象にしたテスト
- 段階的に提供される機能
- 地域やアカウントによって異なる仕様
- 反応次第で変更や撤回があり得る機能
そのため、発表された直後に大きく動くのではなく、次の3つを見極めることが大切です。
- これは正式な全体提供なのか(テストや一部提供ではないか)
- 自分のアカウントにも必要なのか(目的に合っているか)
- 数週間後も残っていそうな機能なのか(撤回の可能性はないか)
新機能と、発信の本質を分けて考える
そして何より、新機能と発信の本質を分けて考える必要があります。ハイライトの位置が変わっても、リールの長さが変わっても、AI機能が増えても、誰に届けたいのか。何を伝えたいのか。どんな気持ちになってほしいのか。なぜ自分が発信するのか。という土台は変わりません。
機能は、届けるための手段です。手段が変わるたびに、発信の軸まで変えていたら、Instagramが仕様を戻したときに、私たちも一緒に振り回されてしまいます。
変化は知る。けれど、すぐには飛びつかない
今回の出来事から私たちが学べるのは、「アップデートを無視してよい」ということではありません。
変化はきちんと知る。
けれど、すぐには飛びつかない。
自分の目的に必要なものだけを取り入れる。
この距離感が、これからますます大切になると思います。そして、Instagram側がAIや効率化を進めるほど、私たち発信者は逆に、誰が発信しているのか。なぜこの人が伝えているのか。この人ともっとつながりたいと思えるか。という、人の部分を大切にするべきなのだと改めて思いました。
よくある質問(FAQ)
まとめ
プラットフォームの仕様は、これからも変わります。新しくなったと思えば、元に戻ることもあります。でも、画面の向こうにいる人が抱える悩みや、誰かとつながりたいという気持ちは、簡単には変わりません。
Instagramの変化に対応しながらも、Instagramの変化だけに支配されない。そのために必要なのは、最新機能を誰よりも早く使うこと以上に、「自分は、誰と何のためにつながりたいのか」を持っておくことなのだと思います。
皆さんは最近のInstagramのアップデートを見て、「これは便利になった」「なぜ、この変更をしたのだろう」と感じたことはありますか。本日もご一読をありがとうございました。
マーケティングの本質×SNSのトレンドを掛け合わせた、SNSからの女性集客を専門としている。14歳でメールマガジンを始め、8ヶ月で20,000人の登録を達成(当時の歴代最年少記録)。個人・法人の500件以上のSNSアカウントを個別に指導。これまでの登壇・研修先は、ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など。全国で延べ15,000名以上へ講演・研修を実施している。詳しいプロフィールはこちら。
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