執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)
※この記事は2026年3月に書いたものを、読みやすく整えています。
💡 結論サマリー(30秒でわかる本記事の答え)

お客様の声は、「感情と悩み」は受け取り、「解決策の提案」には主導権を渡さない。この線を1本引くだけで、発信はブレなくなります。

正反対の声が同時に届いたときは、「今回は誰に届けるか」に立ち返って選びます。全員に70点を届けようとする発信より、決めた誰かに120点を届ける発信のほうが、深く心に残ります。

📖 この記事でわかること
  • 正反対のお客様の声が届いたとき、発信がブレてしまう理由
  • 聞くべき声(感情・悩み)と、聞かなくていい声(解決策の提案)の見分け方
  • お客様の声を発信に活かすための3つの基準

「全員に応えたい」が、発信を弱くする

発信を続けていると、必ず出会う場面があります。ひとつの行動に対して、お客様から真逆の言葉が同時に届く場面です。

無形のサービスなら、「もっとわかりやすくしてほしい」という声と、「内容が簡単すぎる」という声が、同じタイミングで届くことがあります。

私自身、研修講師として、お申し込みが800名を超えるセミナーで登壇することもあります。Instagram(インスタグラム)をはじめとするSNS集客やAI活用をテーマにお伝えするとき、参加者のレベルは本当にさまざまです。

「早すぎて、何を言っているのかわからなかった」
「もっとレベルの高い内容を教えてほしかった」

この両方の声を、同じ日にいただいたことがあります。

最初はとても戸惑いました。どちらの声に応えればいいのか。全員に満足していただきたいという気持ちが、私の軸を少しずつぼやかしていったのです。

声が届けば届くほど、受け止めきれなくなっていく。そんな感覚に、心当たりはありませんか。

これは、意志が弱いからでも、プロ意識が足りないからでもありません。「誰に届けるか」という軸が定まっていないときに、誰にでも起きることなのです。

お客様の声を「聞く」ことと「すべてに応える」ことは別もの

マーケティングの世界でよく引用される、こんな言葉があります。

「顧客に何が欲しいかと尋ねていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう」

※自動車メーカーの創業者、ヘンリー・フォードが語ったとされる言葉(本人の発言かどうかは定かではありません)

お客様の声は大切です。けれど、声を聞くことと、すべての声にそのまま応えることは、まったく別の話です。

数々の研修を経て、私がようやく腑に落ちたのは、「目的最適」で設計するという考え方でした。

研修の場合、最初に確認するのは主催者の目的です。このイベントは何のために開くのか。誰を、どんな状態にしたいのか。そこをしっかり理解したうえで、「今回は誰に届けるか」を自分の中で決めます。

そうすると、「多少満足いただけない方がいるのは、仕方がない」と言い切れるようになります。

これは冷たさではなく、プロとしての誠実さです。全員に70点を届けようとする発信より、決めた誰かに120点を届ける発信のほうが、人の心に深く残ります。

聞くべき声と、聞かなくていい声の見分け方

現場で私が実際に使っている境界線を、具体例とともに整理します。まずは全体像です。

見分けるポイント 聞くべき声 聞かなくていい声
声の中身 感情・悩み(「〜で困っている」「〜がつらい」) 解決策の提案(「〜してほしい」「〜にすべき」)
教えてくれること お客様の本当の課題 お客様が自分なりに考えた手段
発信での活かし方 コピー・切り口・テーマの材料にする 背景にある感情だけを受け取る
主導権 しっかり受け取る プロであるあなたが持ち続ける

聞くべき声:感情と悩みの言葉

感情が動いている言葉は、お客様の「本当の課題」を教えてくれます。コンテンツを考える材料として、積極的に拾ってください。

「インスタが難しくて、始める前から疲れてしまう」

本質:失敗への恐れ、完璧主義のプレッシャー

活かし方:「完璧じゃなくていい」という安心感を届けるコンテンツをつくる

「時間がなくて、発信が続かない」

本質:優先順位の迷い、自分への自信のなさ

活かし方:短い時間で続けられる仕組みや、続けられた人の事例を届ける

「フォロワーはいるのに、売上につながらない」

本質:発信と販売の導線がつながっていない不安

活かし方:集客から購入までの流れを、図解や事例でわかりやすく伝える

感情が動いている言葉の裏には、必ず「本当に解決したいこと」が隠れています。その声は、ていねいに拾ってください。

聞かなくていい声:解決策の提案

一見「ご意見」に見えますが、実はお客様が自分なりに考えた「手段の要望」です。発信や商品の設計は、プロであるあなたが担う部分です。

「もっと投稿の頻度を上げてほしい」

本質:情報をもっと受け取りたいという期待

受け止め方:頻度を上げることが正解とは限りません。先に見直すのは、投稿の質と導線の設計です

「価格をもっと下げてほしい」

本質:価値がまだ十分に伝わっていない、購入にリスクを感じている

受け止め方:値下げは解決策になりません。信頼と実績が伝わる設計を見直します

「こういうテーマで書いてほしい」

本質:その分野への関心や悩みがある

受け止め方:リクエストどおりに動くと、発信の軸がブレていきます。テーマの背景にある感情だけを参考にします

患者さんが「この薬を処方してほしい」と言っても、医師がそのまま従わないのと同じです。解決策を設計するのは、プロであるあなたの役割です。

お客様の声を発信に活かす3つの基準

誰に届けるかを先に決める

すべての声に応えようとする前に、「今回の発信は誰のためか」をはっきりさせます。届ける相手が決まれば、自然と聞くべき声が見えてきます。

感情と悩みの声を材料にする

お客様が「どんな言葉で悩みを表現しているか」は、発信のコピーや切り口にそのまま活かせます。感情の声は、コンテンツの質を上げるいちばんの材料です。

解決策の主導権は渡さない

一人起業家・個人事業主の発信がブレるいちばんの原因は、お客様の「手段の要望」に引っ張られることです。解決策を設計する主導権は、いつも自分が持っておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Qお客様の声を聞かないと、独りよがりの発信になりませんか?
A聞かないのではなく、「何を受け取るか」を分けるのがポイントです。感情や悩みの声は、むしろ積極的に聞きます。手放すのは「こうしてほしい」という手段の指定だけです。悩みの言葉をもとに解決策を考えるので、独りよがりにはなりません。
Q正反対の声が同時に届いたときは、どうすればいいですか?
Aどちらが正しいかで判断せず、「今回は誰に届けるか」に立ち返ります。届けたい相手に近い方の声を優先し、もう一方は「今回の対象ではない方の声」として受け止めます。対象から外れた方には、別の機会や別の内容で応えるという選択肢もあります。
Q「値下げしてほしい」と言われたら、どう受け止めればいいですか?
A価格の問題としてではなく、価値がまだ伝わっていないサインとして受け止めます。実績、お客様の変化、提供内容の具体性など、信頼につながる情報が足りているかを先に見直してください。
Qリクエストされたテーマは、発信しないほうがいいのですか?
A発信してはいけないわけではありません。そのテーマを求める背景にある悩みや関心を読み取り、自分の発信の軸に合う形で取り上げます。リクエストをそのまま形にするのではなく、「なぜ知りたいのか」に答える内容にすると、軸がブレません。
Q届けたい相手(ペルソナ)がまだ決まっていないときは、どの声を優先すればいいですか?
Aまずは、これまでにいちばん深く役に立てた方、またはいちばん届けたいと思う方を1人思い浮かべてください。その方の悩みの言葉に近い声から優先して拾っていくと、少しずつ「誰に届けるか」の輪郭がはっきりしてきます。

まとめ

お客様の声を聞くことは、発信の基本です。けれど、すべての声に応えようとすると、発信はかえって弱くなります。

一言で表すなら、こうです。

「感情は受け取る。解決策の主導権は渡さない」

全員に刺さる発信は存在しません。でも、特定の誰かに深く刺さる発信は、必ずつくれます。

あなたの発信に「主導権」はありますか?ぜひ一度、見直してみてください。

上村菜穂 プロフィール写真
著者プロフィール|上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役)

マーケティングの本質×SNSのトレンドを掛け合わせた、SNSからの女性集客を専門としている。14歳でメールマガジンを始め、8ヶ月で20,000人の登録を達成(当時の歴代最年少記録)。個人・法人の500件以上のSNSアカウントを個別に指導。これまでの登壇・研修先は、ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など。全国で延べ15,000名以上へ講演・研修を実施している。詳しいプロフィールはこちら。

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