執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)

💡 結論サマリー(30秒でわかる本記事の答え)

「推し企業」ランキングで1位になるのは、一番有名な会社でも、一番安い会社でもありません。この調査は「人に薦めたいか」を測るものなので、知名度が高いほど批判者も増え、スコアは伸びにくくなるからです。

この記事では、アパレル・オフィス用品通販・均一価格ショップの3ジャンルで1位になった企業を手がかりに、規模の大小に関係なく持ち帰れる3つの共通項を整理します。

📖 この記事でわかること
  • 「推し企業」ランキングの仕組みと、NPSという指標の考え方
  • なぜ有名企業ではなく、意外なブランドが1位になるのか
  • 1位のブランドに共通していた3つのこと(小さな会社でも使える形で)

「推し企業」ランキングとは?

ふとテレビをつけたとき、日本テレビの『DayDay.』で「推し企業」ランキングが取り上げられていました。

日経ビジネスさんが実施している調査だそうです。

近年生まれた「推し」という言葉が、企業に対して使われている。それだけでも時代を感じますが、それ以上にどのような企業が、なぜ誰かの「推し」になっているのかを興味深く思ったのです。

調査の仕組みは、おおよそこのようになっています。

項目 内容
聞き方 直近1年以内に利用した商品・サービスについて「友人や同僚に薦める可能性はどのくらいか」を0〜10点の11段階で回答
集計の方法 9〜10点を「推奨者」、6点以下を「批判者」とし、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値がスコアになる
調査の規模 調査会社マクロミルに依頼し、インターネットで実施。回答者は毎回1万人規模
この記事で扱う回 第2回(2023年2月27日号)と第3回(2024年3月4日号)

この「推奨者から批判者を引く」という考え方はNPS(Net Promoter Score/顧客推奨度)と呼ばれ、商品やサービスへの信頼・愛着を測る指標として使われています。

ここがこの調査のおもしろいところなのです。

人気のあるものや人は、好きな方が多い分だけ、否定的な方も必然的に増えていきます。批判者の割合を引く仕組みである以上、知名度が高いブランドほど、このスコアは伸びにくいのです。

だからこそ、順位を見ていると「そうだよね」と思うものもあれば、「え、このジャンルはその会社なの?」と驚くものもありました。ここでは、私が特に考えさせられた3つのジャンルを取り上げます。

アパレル1位がZARAである理由

個人的に一番驚いたのが、アパレルです。

私の予想では1位はUNIQLOでした。ところが実際に1位になったのはZARA。UNIQLOはそれより下の順位だったのです。

まさに、知名度が高いほどスコアが伸びにくいという構造が、そのまま出た結果なのだろうと一人で納得していました。

ZARAはスペイン発のファストファッションブランドで、世界に数千店舗、日本国内にも100店舗前後を展開する大企業です。

ZARAの魅力1:オシャレな人こそ愛用するデザイン

ZARAの大きな魅力は、デザインが常にトレンドであることでしょう。

店内に入るたびに、「この方はオシャレが好きなんだろうな」と伝わってくるファッショナブルなお客様の割合が、極めて高いといつも感じます。

(余談ですが、私自身は何度も訪れているのに、いまだに一着も買えていません。講師業の服との相性と、小柄なのでXSでも大きいことが多いという、二重の理由からです。)

さて、本題です。

「オシャレを楽しみたい」と思う方が、同時に抱えている本音があります。それは「でも、使えるお金には上限がある」ということなのです。

この2つを同時に満たしにいっているのが、ZARAの立ち位置です。

シーズンごとに足を運べば、いまのファッションを、負担の少ない金額で、すぐに手に入れられる。ファッションはトレンドが毎年変わるものですから、感度の高い方にとってこれほど魅力的なことはありません。

ZARAの魅力2:憧れのデザインを、手の届く価格で

ZARAのデザインについては、ハイブランドの雰囲気を感じさせるという声をよく耳にします。

この記事を書いているときにも、Instagram(インスタグラム)の発見タブで、ZARAとハイブランドの服を並べて比較する動画が流れてきました。左にZARA、右にハイブランド。同じ方が着用して見せていく構成です。

素人目には見分けがつかないものもあり、驚きながら見ていたのを覚えています。近くで比べれば生地の質感が違うのでしょうし、プロの方なら一瞬で見抜くのかもしれません。

ここで大事なのは、どちらが優れているかではないのです。

「憧れているけれど、まだ手が届かない」という気持ちに、今日から届く選択肢を差し出している。人に薦めたくなるのは、そういうブランドなのでしょう。

オフィス用品通販1位がAmazonビジネスである理由

個人のお買い物では「Amazon派か楽天派か」と語られることが多いですが、このジャンルはオフィス用品通販。競合はモノタロウ、たのめーる、アスクル、カウネットといった顔ぶれです。

私自身もAmazonビジネスに大変お世話になっていて、その使いやすさは大きな魅力に感じています。

  • 商品ページの見やすさ
  • レビューの見やすさ
  • 申請・承認・発注がオンラインで完結すること

3つ目が、特に効いているのだと思います。

オフィス用品は、法人アカウントのほうが個人より安く購入できることもあり、コスト削減につながるのも嬉しいところです。肌感覚では数百円の差が多い印象ですが、大型のディスプレイなどでは差が大きくなることもありました。

ちなみに個人向けと法人向けでアプリが分かれていると知ってからは、スマートフォンでのアカウント切り替えが不要になり、だいぶ楽になりました。

こうして並べてみると、ここで選ばれている理由は「素敵さ」ではありません。面倒がひとつずつ消えていくことなのです。

均一価格ショップ1位がStandard Productsである理由

日本に住んでいれば、誰しも一度は訪れたことがあるであろう均一価格ショップ。

私も小学生の頃、横浜のDAISOに行くのが楽しみでした。何フロアにも広がる100円のアイテムは、夢のような場所だったことを覚えています。

そのジャンルで1位になったのが、Standard Productsでした。

興味深いのは、Standard ProductsもTHREEPPYも、DAISOと同じダイソーグループのブランドだということです。私はTHREEPPYを存じ上げず、調べていて知りました。

ブランド 位置づけ
DAISO 定番の100円ショップ
THREEPPY 大人カワイイ路線の300円ショップ
Standard Products 洗練されたデザインと高品質な日用品を、手に取りやすい価格で

同じ会社が、価格帯と世界観をずらして3つのブランドを持っている。そのうちの1つが、DAISO本体を上回って1位になったわけです。

私も最近は、DAISOよりStandard Productsに行くことが増えたように思います。300円を中心とした価格帯で、従来より高品質な素材、そして環境に配慮した商品が多いところに惹かれています。

とくに気に入っているのが、メイクブラシの王者として知られる熊野筆とのコラボ商品です。アイシャドウブラシとパウダーブラシを購入しました。

本家の熊野筆は1本で数千円から、中には1万円を超えるものもあります。それを思うと、この価格で手にできることに驚かされました。

熊野筆以外にも、金属加工の町として知られる新潟県燕市のカトラリー、800年以上の刀剣づくりの歴史を持つ岐阜県関市の包丁など、名だたる産地とのコラボが並んでいます。

自社だけでは届かない「本物」の説得力を、産地から借りてくる。UNIQLOのデザイナーズシリーズにも通じる魅力を感じました。

その後、ランキングはどう動いたのか

この記事を書いたあと、調査は第4回(2025年)が公表されました。

2024年12月に、20〜69歳の男女1万335人から回答を得たものです。

上で紹介した第3回と直接くらべられるジャンルのひとつが、携帯電話サービスでした。第3回の1位はLINEMO。第4回ではイオンモバイルに入れ替わっています。

大手キャリアが格安プランを次々に充実させるなかで、データ容量別に細かく料金プランを分けるという他社にない手法が支持を集めた、という見立てが紹介されていました。対面での接客が中高年層に好評だった点も挙げられています。

ほかにも、高級車部門ではレクサスがメルセデス・ベンツを抑えて首位に立ち、眼鏡チェーン店部門では老舗のパリミキが、低価格を売りにする新興ブランドを上回って1位になりました。

顔ぶれは変わっても、選ばれ方の構造は変わっていないのです。安さでも知名度でもなく、「その人にとってちょうどいい」を用意できたところが上位に来ている。私にはそう見えました。

出典:日経ビジネス「NPSランキング2025 1万人の推しブランド」日経ビジネス「推しブランドランキング2025」

1位に共通していた3つのこと

今回取り上げたブランドは、どこもかなり大きな企業です。個人や小さな会社がそのまま真似をするのは、正直に言って難易度が高いでしょう。

けれど、「なぜ推されているのか」という一段だけなら、そのまま持ち帰れます。3つに整理してみました。

  1. 相反する2つの本音を、同時に満たす
    ZARAの「オシャレを楽しみたい」と「使えるお金には上限がある」。お客様の本音はたいてい2つあって、片方だけを満たす商品はたくさんあるのです。両方を引き受けたところが選ばれます。
  2. 面倒を、ひとつずつ消す
    Amazonビジネスの申請・承認・発注。人に薦めたくなる理由は、多くの場合「素敵だから」ではなく「楽だったから」です。お申し込みからお支払いまでの手順を1つ減らせないか、という問いに置き換えられます。
  3. 自分にない説得力を、外から借りる
    Standard Productsの熊野筆や燕市、関市。実績が少ない時期ほど有効な考え方で、産地・専門家・資格・お客様の言葉など、借りられるものはいくつもあります。

実際に商品を買ってみて、なぜ自分が惹かれたのかを言葉にしてみる。これがマーケティングの視点を磨く、いちばん手軽な練習だと思っています。

この考え方をSNSでの発信に落とし込む方法は、SNS集客セミナーでもお伝えしています。

よくある質問(FAQ)

Q
「推し企業」ランキングとは何ですか?
A
日経ビジネスが1万人規模で実施している消費者調査です。直近1年以内に使った商品・サービスを「友人や同僚に薦めたいか」で評価し、業界ごとに順位をつけたものになります。
Q
NPS(顧客推奨度)と、満足度調査は何が違うのですか?
A
満足度は「自分が良かったか」を聞きますが、NPSは「人に薦めるか」を聞きます。人に薦める行為には自分の信用がかかるため、より厳しい基準になるのです。批判者の割合を差し引く仕組みのため、知名度の高いブランドほどスコアが伸びにくいという特徴もあります。
Q
一人で事業をしていても、参考にできますか?
A
できます。規模を真似するのではなく、記事の後半で挙げた3つ(相反する本音を両方満たす/面倒をひとつ消す/外から説得力を借りる)を、ご自身のサービスに当てはめてみてください。むしろ小さいほうが、お一人のお客様の本音を確かめやすいのです。
Q
最新のランキングはどこで見られますか?
A
日経ビジネスの特集ページで公開されています。対象となる業界は回ごとに入れ替わるため、同じジャンルの推移を追いたい場合は、前回と共通の業界があるかを先に確かめるとよいでしょう。

まとめ

「推し企業」ランキングを眺めていて、いちばん面白かったのは、順位そのものではありませんでした。

一番有名でもなく、一番安くもない会社が、上位に並んでいるという事実です。

人に薦めるという行為には、自分の信用がかかります。だからこそ「良かった」だけでは足りず、「この人にも合うはず」と思えたときにはじめて、言葉になるのでしょう。

その一段を用意できているかどうか。規模の大小に関係なく問われているのは、そこなのだと思います。

何か少しでも参考になれば嬉しいです。本日もご一読をいただき、ありがとうございました。

上村菜穂 プロフィール写真
著者プロフィール|上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役)

マーケティングの本質×SNSのトレンドを掛け合わせた、SNSからの女性集客を専門としている。14歳でメールマガジンを始め、8ヶ月で20,000人の登録を達成(当時の歴代最年少記録)。個人・法人の500件以上のSNSアカウントを個別に指導。これまでの登壇・研修先は、ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など。全国で延べ15,000名以上へ講演・研修を実施している。詳しいプロフィールはこちら

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