執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)

💡 結論サマリー(30秒でわかる本記事の答え)

心が動く文章を書ける人は、文章がうまい人ではなく「物事への思考が深い人」です。正しく伝えることと、心を動かすことは、まったく別の技術だからです。

読み手の心が動く文章には、5W1Hがわかりやすいことと、具体例や実体験が書かれていることという2つの共通点があります。そして思考を深めるためにできるのは、「なぜ?」を繰り返してノートに書く習慣と、深く問いかけてくれる人との対話の2つです。

📖 この記事でわかること
  • 「心が動く」とは何が起きている状態なのか
  • 正しい文章と、心が動く文章のちがい
  • 読み手の心が動く文章に共通する2つの条件
  • 同じ体験でも、書き方でどれだけ伝わり方が変わるかの実例
  • 「物事の思考が深い人」になるための2つの方法
  • 商品やサービスを紹介するときに押さえたい、読み手の相反する2つの感情

たくさんの情報であふれている現代の中で、発信を目にとめてもらえることは、とてもありがたいことですよね。

けれど、自分がネットを使っているときのことを思い出してみると、記憶に残らない情報がほとんど。そう感じる方が多いのではないでしょうか。

そもそも100%記憶に残ることは難しいものの、せっかく目に留めてもらえたなら、記憶にも残る文章、読み手の心に届く文章を書きたいところです。この記事では、心が動く文章を書くために本当に大切なことを、私自身の失敗も含めてお伝えします。

「心が動く」とは、日常のささやかな一言で起きている

そもそも〝心が動く〟とは、どういうことでしょうか。辞書を引くと、こう定義されています。

こころ‐うご・く【心動】

一、気持が動揺する。思い乱れる。感動する。
二、心がその方に引きつけられる。

『精選版 日本国語大辞典』より

個人的な感覚ですが、私は「心が動く」をポジティブな意味で使うことが多いです。誰かが「ちょっとでも行動をしてみよう」「自分もこういうふうに心構えをしよう」と思って過ごし、日常がちょっとでもいい方向に変わること。それが心が動くということだと思っていました。

もちろん、ときに感動で涙をすることも素晴らしいことですよね。

売り切れたパフェが、いい思い出に変わった一言

1ヶ月ほど前から楽しみにしていたカフェに訪れたときのことです。

そのカフェで絶対に食べたいパフェがあって注文をすると、その日に限って売り切れてしまったとのこと。さらに、ドリンクに関しても私がオーダーしたモカラテが売り切れ。

お店の方いわく「大変申し訳ございません。ほかの商品はあるのですが、パフェとモカラテだけが売り切れてしまっておりまして……」とのことでした。

ほかのメニューも素敵だったのですが、1ヶ月も前から楽しみにしていたこともあって残念に思っていると、一緒に訪れた方が私にこう声をかけてくれたのです。

「すごいね、菜穂ちゃん! 人気のメニューを見抜く力があるから、人気のものを選んだんだね! こっちのアフタヌーンティーも美味しそうだよ。」

マーケティングやPRに関する仕事をしている以上、〝人気のものを見抜く力〟とほめていただけることは、この上ない喜びです。すっかり気分をよくした私は、美味しくアフタヌーンティーをいただきました。

お目当てのパフェが食べられなかった事実は変わらないのに、物事の解釈次第で、ネガティブな出来事がポジティブな気持ちに変わります。

お目当てのパフェが食べられない:ネガティブ

「人気のメニューを見抜く力がある」とほめてもらった:ポジティブ

このときの「人気のメニューを見抜く力があるんだね!」が、心が動いた言葉でした。一行なら言葉ですが、これを文章にしたものが、今回のテーマである心が動く文章というわけですね。

そう考えるとどうでしょう。〝心が動く瞬間〟は、日常のあちこちに隠れていないでしょうか。涙するほどの感動は少ないかもしれませんが、ささやかな一言で、人の心は動くのです。

正しい文章と、心が動く文章はまったく別物

「文章が苦手で、全然集客に結びつかない……」というご相談を、これまでにも数多くいただいてきました。そのたびに、文章のテクニックだけではなく、もっと大切なことはなんだろうと考えていたのです。

そこで至った結論が、心が動く文章を書ける人は〝物事の思考が深い人〟であるということでした。

というのも、正しい文章が必ずしも心を動かすかというと、そうではないからです。

アナウンサーは〝話し方〟のプロであり、新聞記者は〝書き方〟のプロです。わかりやすく、正しい話し方・正しい書き方で伝えてくれています。任務で求められていることは〝正しく伝えること〟なので、こういう人も必要です。

もちろん、心を動かすことを一番に考えて伝えられるアナウンサーや新聞記者も多くいるはずです。それでも、正しさを追求した伝え方だけでは、聞いている人・読んでいる人の心が動くことはかなり少ないでしょう。

しかし、私たちはどうでしょうか。ないことをあると伝える嘘はよくありませんが、この記事を読んでくださっているみなさんは、正しい伝え方以上に、人の心が動く伝え方に関心があるはずです。

読み手の心が動く文章に共通する2つの条件

ノートを開いて文章を書いている手元

では、どうしたら読み手の心に届く文章が書けるのでしょうか。私が大切にしているのは、次の2つです。

  • 5W1Hがわかりやすい:いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように
  • 具体例や実体験が書かれている:自分にしか書けないことが入っている

短くまとめすぎると、どこにでもある情報になる

よくお聞きするのが「長文だと読まれないと思いました」という言葉です。そう考えて、文章を短くまとめる方がとても多いのです。

ビジネスの場で誰かにプレゼンテーションをするときや、相手が何百件も目を通さなければいけないものの一つである場合は、端的にすることが重要でしょう。

しかしSNSの発信では、短くすればするほど、よほどキャッチコピーが上手くない限り個性がなくなります。どこにでもある情報になってしまい、結局、誰の記憶にも残らない。これはとてももったいないことですよね。

だからこそ、5W1Hを意識しながら、具体例や実体験をお伝えしましょう。

実体験を書くときは、悲壮感で終わらせない

具体例や実体験を伝えるときのポイントは、悲壮感で終わらない文章に仕上げることです。

「私は文章が好きなのですが、なぜか集客ができません」という方の文章を拝見すると、次のようなケースを何度もお見かけしてきました。

  • 読者が置いてきぼりのまま、悲しんでいたり苦しんでいたりする文章
  • 辛い状況のまま話が終わり、読み手が心配をしてしまうような文章

同じ体験でも、書き方でここまで変わる

実際に、私自身の同じ体験を2通りで書いてみます。まずは、読者を置いてきぼりにしている書き方から。

A:心が動かない書き方

「私は大学時代に、陸上競技部の短距離に所属をしていたのですが、いつもいつも必ずビリでした。どんなに頑張っても、みんなに追いつくことができず、練習をしても追いつくことができず、とても辛かったです。」

……と書いても、まったく心に響かないですよね。では、同じ体験を書き直してみましょう。

B:心が動く書き方

私は大学時代に、陸上競技部の短距離に所属しました。実は中学・高校と長距離を走っていたのですが、当時の陸上部では長距離に女子が入部できなかったのです。

そこでサークルを勧められるものの、当時の私は体育会に所属をし、厳しい環境下で過ごすことが就職活動に有利になる、と思い込んでいました。

高校生の頃は1日14時間ほど勉強をしていたにもかかわらず、大学受験にはボロボロに落ち、滑り止めにも止まりませんでした。だから就職のときに逆転したい、悔しい思いのまま社会人になりたくないと、18歳の頃から思っていたのです。

しかし大学の部活動は、弓道部やラクロス部なら初心者もいますが、陸上競技部に短距離の初心者で入部をする人は基本的にいません。もともと短距離に自信がある人か、よほどの変わり者でもない限りいないのです。

入部する人はほぼ全員と言っていいほど経験者で、県大会は常連、関東大会への出場も当たり前のように成果を出してきています。中にはインターハイに出場している人もいるので、経験者の中でも人に言える成果を出している人なのです。

そんな中で短距離初心者で入ること、ましてや自信もないのに入ることは、どんなに無謀な挑戦なのでしょう。

走るたびに恥ずかしくなるほどダントツでビリだったので、逃げたいと何度も思いました。それでも、勉強も失敗し、スポーツも失敗したまま逃げたら、一生何をやってもダメなんじゃないかと思い、続けることにしたのです。

覚悟をしてから、もともと週5日だった部活に加えて、日曜日はコーチのいるスポーツジムへ通い、週6日の練習にしました。朝4時半に起きて筋トレをして、柔軟をして、ジョギングを25〜30分ほどしてから学校へ行きました(ちなみに工学部だったので、学業もそこそこハードだったのです)。

そんな甲斐もあり、大学4年次にはビリを脱出し、タイムも100mで12秒台に……と言いたいところなのですが、やっぱり私は成果を出すことができず、結局ビリのまま卒業しました。

何回後輩が入っても常にビリで、恥ずかしさだらけの大学生活。辛かったし、何度も逃げたかったし、自信なんてまったく持てませんでした。

しかし、挑戦しなきゃよかったのかというと、答えはNoです。入部して本当によかったと思っています。

もう一度同じ生活はしたくありませんが、あのときの自分があったからこそ、ビジネスで辛いときに「学生時代、体と心のどちらも辛い経験をしたよね。でも今、辛いのは気持ちだけでしょ? 体は辛くないし、何より私は人一倍体力があるから大丈夫!」と気持ちを切り替えることができます。

この言葉で何度、自分で自分を救ってきたことか。それができるのは、学生時代の辛い経験があったからこそなのです。

結果がすべての世界で結果を出せなかったことは、自分の至らなさが大きいです。今振り返っても反省点はいくつもあります。それでも、うまくいかなかった経験を通して得たことに目を向けることも、同じくらい大切なのだと思っています。

Bのほうが圧倒的に長いですが、最後まで読んでくださった方もいるのではないでしょうか。そして、どちらのほうが記憶に残るのか。答えは明らかですよね。

比較項目 A:心が動かない書き方 B:心が動く書き方
5W1H 「大学時代」「辛かった」しかわからない なぜ入部したか、何をどれだけやったかまで書いてある
読み手の位置 置いてきぼり。感想の共有で終わる 読み手が自分の経験に重ねられる
終わり方 辛いまま終わる(悲壮感) その経験が今とどうつながるかで終わる
読者のメリット すぐ読めるが、持ち帰れるものがない 「自分は何を得たのか」を考えるきっかけになる

Aは短いのですぐ読めますが、読んでくださった方へのメリットが皆無です。一方でBは、辛かったり苦しかったりした経験が今の自分とどうつながるのかを、考えるきっかけにしてほしいという気持ちで書いています。

成果は大切ですが、成果だけではありません。ここまで読んでくださった方が文章を書くときも、ぜひ5W1Hのわかりやすさと、具体例・実体験を大切にしてほしいと思います。そしてここで効いてくるのが、物事への思考の深さです。

「物事の思考が深い人」になるための2つの方法

冒頭で、人の心が動く文章を書ける人は〝物事の思考が深い人〟とお伝えしました。文章が苦手な人も、ぜひご一緒にこのテーマについて考えていきましょう。

〝物事の思考が深い人〟になるために、私が行き着いた方法は2つです。

  1. 自分と向き合う時間をつくって熟考する習慣をつくる
  2. 思考力が深い人とたくさん会話をする

自分と向き合う時間をつくって熟考する習慣をつくる

前者は、なんとなく〝ながら〟で考える時間とは別に、ペンを用意してノートに書き込む時間のことです。ポイントは、「なぜ?」「どのように?」「具体的には?」「つまり?」を繰り返して深掘りしていくこと。

実際に、私が「新規の集客をするためにはSNSを活用するべき!」を伝えたいときの深掘りは、こんな流れになります。

Q. なぜ?

ビジネスは既存のお客様がもちろん大切だけれど、どうしても離れていく方は出てしまうから、新しいお客様と繋がれる努力が必要だから。

Q. 新規の方と繋がるための努力が、なぜSNSなの?

商品やサービスの質は購入しないとわからないけれど、SNSなら「想い」や「人柄」を伝えることができるから。

Q. それならホームページでもいいのでは? なぜSNSなの?

ホームページ経由の検索流入も捨て難いのは事実。ただ、検索で上位を取ることは難易度が高く、知識と経験と文章力と継続力がないとできません。その点、SNSは運用がしやすく、特に20〜40代へのアプローチは今の時代に合っています。

Q. SNSの魅力を列挙すると、具体的にどのようなことがある?

  • 出会いの質が高い。興味や関心のある人と繋がることができる
  • 無関心の人と繋がらなくていい世界だからこそ、自分の想いや強みを発信するほど素晴らしい出会いができる
  • アウトプットをする習慣があることで、インプットの質も上がる
  • 表現力や伝える力の向上に繋がる
  • 自分のファンをつくることで、応援したい人の力にもなれる
  • ホームページよりも気軽に、無料で始められる
  • 発信をせず見ているだけの人も含めると、お客様になってくれそうな人が大勢いる=マーケットがある
  • 一言でSNSと言っても、リアルな信頼関係が生きるFacebook、匿名だからこその本音が集まり拡散力が抜群なX(旧Twitter)、トレンドが早くユーモアと独創性が尊重されるTikTok、世界観の表現に優れコミュニケーションを大切にしているInstagram、映像で情報量を濃く伝えられるYouTubeなど多種多様。自分に合うものを使える

Q. つまりSNSとは、どのような魅力がある?

思考力や表現力を高めることができながら、実行すればするほど、時間も空間も超えて上質な出会いに繋がるもの。実生活で接点がなくても価値観の合う人はたくさんいて、そんな人たちと繋がれるのがSNS。本当にいい商品・サービスなら、少しでも多くの人に知ってもらうためにSNSを活用するべき。

というように展開できました。自分が伝えたいことに「なぜ?」「どのように?」「具体的には?」「つまり?」を繰り返していきましょう。その練習を重ねることで、物事の思考が深い人に近づいていきます。

思考力が深い人とたくさん会話をする

「やってみたけど難しいな」と思うときは、2つめの「思考力が深い人とたくさん会話をする」が解決策です。自分が思いもしない角度で、話を広げてくれるからです。

自分のことは自分が一番わかるようで、わかりません。なぜなら、当たり前の基準が人によって異なるからです。

少し雑談も含みますが、大流行しているMBTI診断(個人の性格を16タイプに分類する診断)について。私は自分がうまく活用できていないこともあり、あまり信じていませんでした。

理由は、15分くらいのセルフチェックだと「この質問、状況によるよね?」と思ってしまうから。「人より◯◯なタイプだ」という質問に対しても「人と比べてどうかなんてわからない!」と思い、だいぶ疑いながら回答したからです。

先日も友人と旅行をしているときに「MBTI診断でどのタイプ?」と聞かれ、「こういう診断って他の人との違いの基準がわからないから、あんまり信用していないんだよね」と率直に回答をすると、友人から衝撃の一言が。

「実は私、MBTI診断で自分がどのタイプか気になったから、診断時間で6時間かかるグループセッションで診断してきたよ。ほかの人と対話しながら進めると、自分の基準がどんな感じなのかわかりやすかった!」

これを聞いた瞬間に、診断が当たる・当たらないではなく、私がきちんと使いこなそうとしていなかったんだと反省しました。

一般的に流行している診断でも、自分のことを本気で知ろうとしたら、15分で終わるものを360分(24倍の時間!)かけて診断する必要がある。そもそも人は16のタイプではなく十人十色なので、自分のことを知るには時間がどれほどあっても足りないのだと思いました。

だからこそ、人生の節目も、ちょっとした行動と思ってしまいそうなことも、こう問いかけてくれる人との対話が大切なのです。

  • なぜ、その決断をしたの?
  • なぜ、それを始めたの?
  • それをやってみて、どう感じた?
  • こんなとき、どうする? それはなぜ?

その〝なぜ〟にこそ人の個性があふれます。自分の中の「なぜ」の軸を明確にして発信することで、その軸に共感する人や憧れる人が集まってきます。

売れる文章に必要な、お客様の相反する2つの感情

読んでほしい相手、未来のお客様の目線に立って伝えると決めたところで、具体的にどう書くかのおすすめを1つだけ厳選しました。

文章以外でも共通する人の心理ですが、お客様は商品やサービスを購入するときに『ワクワク感』と『不安感』を同時に抱きます。みなさんも自己投資の買い物をするとき、相反する感情を同時に抱きませんか。

読み手の感情 頭に浮かんでいること 書き手が用意しておくこと
ワクワク感 これを使ったら、自分の毎日はどう変わるんだろう 自分自身が変わった体験談を、具体的に伝える
不安感 自分に合わなかったら、どうしよう 初めて買うときに自分が抱いた不安や疑いを、先に言葉にする

私自身がワクワクと不安を同時に抱いた例

たとえば、Amazonオーディブル。会員なら対象作品が聴き放題になり、会員にならなくても単品購入ができるサービスです。

これによって、ながらの時間(お料理の準備、掃除の最中、お散歩中など)を有効活用できることが、何よりの魅力でした。プロが朗読をしているので聞き取りやすく、再生速度も変えられます。文章を読むことが苦手でも、目が疲れることなく知識や教養を増やすことができます。

自分がこれまで空白で過ごしていた時間が、価値のあるインプットの時間に変わる。そう思うとワクワクしませんか。それと同時に、購入に対しての不安もあるかもしれません。

そんな不安な感情に対しても、無料体験期間が用意されています。「あまり使わないな」と思ったら解約手続きもできるので、「ちょっと試したい!」が手軽に叶うのです(購入した書籍は、解約後も読み続けられます)。

それであれば、まず登録して生活の一部に取り入れてみたほうが、知識が広がり、人生の可能性を広げることに繋がる。これが、読み手のワクワク感と不安感のどちらにも答える伝え方です。

いい話(メリット)があるからこそ購入を決めますが、それと同時に、未知なる買い物には誰でも不安を抱くもの。だからこそ、みなさんが提供している商品やサービスにおいて、自分自身が変わった体験談があれば、そのエピソードを具体的に伝えましょう。

同時に、商品やサービスを初めて購入・体験するときの気持ちを思い出し、不安や疑いがあったらそれも伝えてみる。それだけで、集客や売上につながる確率が一気に増します。

※本文中のAmazonオーディブルへのリンクはアフィリエイトリンク(広告)を含みます。サービス内容・無料体験の条件は変更されることがあるため、最新の情報は公式サイトでご確認ください。

文章は、才能がなくても書けるもの

女性集客や女性向けのPRに関する仕事をしていると、お客様から少なからずこんな言葉をいただきます。

  • 「私は文章の才能がないからなぁ」
  • 「上村さんはもともとライターさんなので、文章力があって羨ましいです」

うまくいかないことは、自分は苦手なことだと逃げたくなってしまう。そのお気持ちもよくわかります。私もかつて営業が苦手だったときに、何度「私は営業が苦手だからなぁ」と言い訳をしたことでしょうか。

しかし、どんな言い訳があったとしても、お客様にとっては関係ありません。才能があろうがなかろうがお客様には関係なく、損をするのは自分なのです。そう思うと、ちょっと捉え方が変わりませんか。

そもそも「才能」は、辞書ではこう説明されています。

さいのう【才能】:ある個人の素質や訓練によって発揮される、物事をなしとげる力。

こう考えると「才能って、パッと魔法のようにできることではないのでは?」と思うのは私だけでしょうか。〝訓練によって発揮される〟〝物事をなしとげる力〟も含めて才能なので、トレーニング次第であるという希望が持てそうです。

4歳の絵日記に、才能はひとつも見当たらない

私の文章に関するトレーニングでいえば、幼稚園生の頃に3年間、母のおかげもあって毎日、絵日記を書いて(描いて)いました。

4歳の頃に書いた絵日記のページ

特に年少さんの頃(2月26日)は、こんな調子です。

「菜穂の だいすきな さくらんぼと いちごが おきゅうしょくにはいっていました。 ぜんぶ たべました。」

まるっきり才能を感じません。2月に書いたものなので、8月生まれの私は4歳半。空白がよくわからないところで入っていますし、好きなものを食べた報告です(笑)。

でも、才能がない文章からスタートしても、この3年間(1,095日)の糧があって小学生になるか、この糧がなくて小学生になるか。

幼稚園の3年間で書きためた絵日記21冊

幼稚園生の頃に3年間かけて書き続けた、21冊の日記です

その後、小学4年生の頃は担任の先生が好きで、先生と仲良くなりたくて、毎日日記を書いていました。先生は書いたらフィードバックをしてくれたので、この1年間でだいぶ文章力が上がりました。

中学生の頃はメールマガジンを発行し、ここでも8ヶ月間はほぼ毎日のように文章を書いていました。高校生の頃は文章にまつわるピンとくる話がないのですが、大学時代は工学部から卒業論文を仕上げ、日本生活学会へ提出をして発表をしています。

人より圧倒的に書いてきた量が多いので、仕事にすることができました。質の前に、まず量です。そしてそのスタートは、年齢に関係ないものだと信じています。

おまけ:わかりにくい文章は「こそあど言葉」に原因がある

ここまでの考え方を理解したうえで、文章のテクニックも押さえておきましょう。よくあるのが、こそあど言葉の使いすぎです。

「これ」「それ」「あれ」「どれ」、「この」「その」「あの」「どの」などの言葉を『こそあど言葉』と言います。たとえば、こんな文章です。

「ホテルニューオータニ横浜では、綺麗な景色を楽しみながらビュッフェを楽しむことができます。

夜はヤリイカのマリネ、彩りスティックサラダ、紫キャベツのマリネ。メインはカニとエビのシリアルドリアを注文しました。

デザートには豆乳プリン、プディング、りんごのシブーストにシフォンケーキも。

これがとても美味しかったのです。」

最後の「これ」が何を指しているのかわからない、代表例です。このような文章を、本当によくお見かけします。

読み返すときは、指示語が何を指しているのか、読み手にも伝わるか。そこに注意をして読み返しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q
文章が苦手でも、心が動く文章は書けますか?
A
書けます。心が動く文章に必要なのは文章のうまさではなく、物事への思考の深さだからです。辞書でも「才能」は訓練によって発揮される力と定義されています。まずは自分の体験に「なぜ?」を繰り返すところから始めてみてください。
Q
長い文章は読まれないのではないでしょうか?
A
場面によります。プレゼンや、大量の中の1件として読まれる文章は端的にするべきです。一方でSNSの発信は、短くするほど個性が消えて「どこにでもある情報」になりがちです。長さそのものより、5W1Hと具体例が入っているかを基準にしてください。
Q
実体験を書くときに、いちばん気をつけることは何ですか?
A
悲壮感で終わらせないことです。辛い状況のまま話が終わると、読み手が心配するだけで終わってしまいます。その経験から何を得て、今の自分とどうつながっているのかまで書くと、読み手が自分ごととして受け取れるようになります。
Q
「物事の思考が深い人」になるには、何から始めればいいですか?
A
伝えたいことを1つ書き出し、「なぜ?」「どのように?」「具体的には?」「つまり?」を繰り返してノートに書くところからです。〝ながら〟で考えるのではなく、ペンを持って書き出すのがポイント。難しいと感じたら、深く問いかけてくれる人と話す方法が近道になります。
Q
商品やサービスを紹介するとき、不安な点も書いていいのですか?
A
書いたほうが伝わります。お客様は購入時にワクワク感と不安感を同時に抱いているからです。いい面だけを並べると不安が残ったままになります。自分が初めて買ったときに抱いた不安と、それがどう解消されたのかをセットで書いてみてください。

まとめ

心が動く文章を書ける人は、文章がうまい人ではなく〝物事の思考が深い人〟です。正しく伝えることと、心を動かすことは別の技術だからです。

  • 心が動く瞬間は、日常のささやかな一言の中にある
  • 読み手の心が動く文章は、5W1Hがわかりやすく、具体例や実体験が入っている
  • 実体験は、悲壮感で終わらせず「今とどうつながるか」まで書く
  • 思考を深めるには、ノートに「なぜ?」を書く習慣と、深く問いかけてくれる人との対話
  • 商品を紹介するときは、ワクワク感と不安感の両方に答える
  • 文章は才能ではなくトレーニング。質の前に、まず量

「辛い」「悔しい」と思うほど頑張ったことで、もし成果が出せていなくても、そこで得た価値観は何なのか。今の自分とどのようにつながっているのか。この記事が、それを考えるきっかけになったら嬉しいです。

上村菜穂 プロフィール写真
著者プロフィール|上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役)

マーケティングの本質×SNSのトレンドを掛け合わせた、SNSからの女性集客を専門としている。14歳でメールマガジンを始め、8ヶ月で20,000人の登録を達成(当時の歴代最年少記録)。個人・法人の500件以上のSNSアカウントを個別に指導。これまでの登壇・研修先は、ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など。全国で延べ15,000名以上へ講演・研修を実施している。詳しいプロフィールはこちら

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