執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)

💡 結論サマリー(30秒でわかる本記事の答え)

私たちは大人になるほど、思ったことをそのまま言えなくなっていきます。けれどそれは、感性が失われたからではありません。「嫌われたくない」という気持ちが、少しずつ言葉を加工させているだけなのです。

アドラー心理学の考え方をヒントに、自分の言葉を取り戻すための現実的な一歩をまとめました。結論は、全員に好かれようとすることをやめ、信頼できる人をたった一人でも持つことです。

📖 この記事でわかること
  • 手帳の名言・格言部門で気づいた、ある共通点
  • 同じ言葉でも、子どもと大人とで受け取られ方が変わる理由
  • 『嫌われる勇気』が示す「変わらないほうが楽」という選択
  • 嫌われることへの怖さと、どう折り合いをつけるか
  • SNSで発信する人にとっての「嫌われる勇気」の使いどころ

手帳の名言・格言部門で気づいた、ある共通点

年が明けると、気持ちの心機一転とともに、身近なアイテムも新しくしたくなるものですよね。私はスケジュールをスマートフォンのカレンダーで管理しているのですが、手帳はタスク管理のために使っています。

持ち歩くと荷物になるので、置き場所は自宅。月間ページには予定を一切書かず、デイリーのページだけを使います。そこに書いているのは、今日やったことを、感情を入れずに事実だけ。こうすると仕事の進み具合が目に見えるので、次への力にもなりますし、管理もしやすくなるのです。

その年に選んだのは、高橋書店のワインレッドの一冊。品のある質感が好きで、色に惚れ込んで決めました。

高橋書店の手帳をお使いの方はご覧になったことがあるかもしれませんが、毎年恒例の企画として、手帳大賞の名言・格言部門というものがあります。日常の会話の中で「うまいことを言うなぁ」と感心して、思わずメモしたくなった言葉を募集する企画です。私はこれを読むのが、毎年のさりげない楽しみになっています。

その年の受賞作を読んでいて、私はひとつ、奇妙なことに気がつきました。

応募しているのは、会社員や主婦の方といった大人の女性です。ところが、掲載された小さな文字をよく見ると、その名言を実際に口にしていたのは、全員が子どもだったのです。

子どもの名言集という企画ではありません。募集要項に年齢の指定はなく、身近な人の言葉であればよいのです。それなのに、選ばれた言葉はどれも子どものものでした。

大人になるほど、素直な言葉は許されにくくなる

受賞作に触れたとき、私が感じたのは「なんて豊かで、柔らかい発想だろう」ということでした。言葉がまっすぐで、きれいなのです。

つまり子どもたちは、誰の目も気にせず、自分が思ったことをそのまま言葉にしているのです。本当に素晴らしいことだと思います。

同じ言葉でも、誰が言うかで受け取られ方が変わる

けれど、同じ言葉を大学生や社会人が口にしたら、どうでしょうか。「なんて空気が読めないの」と思われてしまうかもしれません。

言葉の中身は変わっていないのに、発した人の年齢や立場で、評価だけが変わってしまう。ここに、大人の言葉が縮こまっていく理由があるのだと思います。

表情にすら「正解」が求められている

言葉だけではありません。顔に気持ちを出すことも、嫌われる理由になることがあります。「あの人は性格が悪い」という噂話の根拠が、ある場面で不機嫌そうな表情をしていた、というだけのこともあるのです。

もちろん、時と場合によります。本当に配慮が足りない場面もあるでしょうし、逆に、その人の素直な一面が誤解されているだけのこともあるでしょう。

それでも確かなのは、誰もが、気持ちを顔に出すことをよしとするわけではないという事実です。私たちは大人になるにつれ、ある程度決まった形式の中で、予測どおりの表情をすることを求められていくのではないでしょうか。

「嫌われたくない」の正体をアドラー心理学から考える

ここで、岸見一郎さん・古賀史健さんの『嫌われる勇気』からヒントをいただきたいと思います。アドラー心理学を対話形式で読み解いていく一冊で、手に取ったことのある方も少なくないでしょう。

私がこの本をおすすめしたいのは、人生に何らかの悩みがある方すべてと、今の現状に不満がある方すべて。そう言い切れるくらい、幅広い悩みに効く本だと思っています。

変わらないほうが楽、という選択をしている

同書には、生き方を変えようとするとき、人は必ず勇気を試される、という趣旨の指摘があります。新しい自分になれば、何が起きるか分からない。どう対処すればいいかも分からない。だから不満を抱えたままでも、今のままでいるほうが楽で安心なのだ、と。

この対比は、そのまま図にできます。

選ぶもの ついてくる感情 起きること
変わらないこと 不満(ずっと残り続ける) 今日と同じ明日が続く。予測できるので安心できる
変わること 不安(一時的に大きくなる) 何が起きるか読めない。そのぶん現状は動きはじめる

同書がはっきりと述べているのは、うまくいかない原因は過去でも環境でも能力でもなく、幸せになる勇気が足りていないだけだという点です。厳しいようでいて、実はとても希望のある指摘だと思うのです。原因が過去にあるなら変えられませんが、勇気の話であれば、今日から手が届くからです。

自由と、嫌われたくない気持ちの綱引き

嫌われたくないと思うこと自体は、人としてごく自然な欲望だと同書も認めています。そのうえで、その欲望に抗えるのが人間なのだ、という立場を取ります。坂道を転がる石とは違い、私たちは自分の意思で坂を登り返せる、というたとえです。

そして、誰かに嫌われているということは、自分の方針に従って生きている証でもある、と説きます。他者の評価を気にせず、承認されないかもしれないという代償を引き受けないかぎり、自分の生き方は貫けない、というわけです。

私たちは大人になるにつれ、この2つの間で揺れます。

  • 自由でいたい:自分の言葉で話し、思ったことを表情に出したい
  • 嫌われたくない:波風を立てず、想定どおりの反応でいたい

そして多くの場合、後者が勝ちます。だからこそ私たちは、自分の考えを少しずつ加工してしまうのではないでしょうか。

それでも自分の言葉でいるための、たったひとつの方法

「嫌われたくない」という怖さに対して、私なりの答えがあります。とはいえ、これも私自身が悩んでいたときに、恩師である女性からいただいた言葉なのですが。

それは、信頼できる人を、たったひとりでもいいので持つことです。

嫌う1人ではなく、受け入れてくれる人を見る

同書では、10人いれば、そのうち1人はどうしてもあなたを批判し、2人は深く理解し合える相手になり、残りの7人はどちらでもない、というユダヤ教の教えが紹介されています。そして、調和を欠いた人は、その1人だけを見て世界のすべてを判断してしまうのだ、と。

自分らしくいればいるほど、そこには賛否が生まれます。ありのままを受け入れてくれる人もいれば、自分の世界観と合わないと感じて距離を置く人も現れます。

けれど大切なのは、離れていく人ではなく、大切な人・信頼できる人のほうへ目を向けることです。そして自分の自由を追いかけ続けること。そこで必要なのは能力ではなく、勇気なのだと思います。

SNSで発信する人にとっての「嫌われる勇気」

この話は、発信の場でもそのまま起きます。誰にも引っかからない言葉を選ぶほど、投稿は安全になっていくのです。そして安全になるほど、誰の心にも残らなくなります。

発信のかたち 言葉の選び方 読み手に起きること
嫌われないための発信 誰も否定しない、一般的な言い方を選ぶ 反対もされないが、覚えてもらえない
自分の言葉での発信 立場をはっきりさせ、理由まで書く 合わない人は離れるが、合う人が深く残る

お仕事としてSNSを使うなら、後者を選ぶ場面が必ず出てきます。全員に好かれるアカウントは、裏を返せば、誰にとっても「自分のための場所」にはならないからです。

とはいえ、いきなりすべてをさらけ出す必要はありません。私自身も、時に仮面をかぶり、時に壁をつくって一歩引いていたと思います。まずは、一つの投稿の中に、自分の考えを一行だけ入れてみる。それくらいの小ささから始めれば十分なのです。

よくある質問(FAQ)

Q
『嫌われる勇気』は、どのような人に向いていますか?
A
人間関係に悩みがある方、今の状況に不満があるけれど動けずにいる方に向いています。対話形式で進むので、心理学の本を読み慣れていなくても読み進めやすい一冊です。
Q
嫌われるのが怖くて、SNSで発信できません。
A
全員に向けて書こうとすると、言葉は必ず薄まります。まずは、これまで関わったお客様をひとりだけ思い浮かべて、その方に話しかけるつもりで書いてみてください。宛先が決まると、怖さはずいぶん小さくなります。
Q
自分らしさを出すと、フォロワーが減りませんか?
A
合わない方が離れていくことはあります。ただ、お仕事につながるのは数ではなく、深く共感してくださる方です。離れた人の数ではなく、残ってくださった方が誰なのかを見るようにしています。
Q
「嫌われる勇気」は、何を言ってもいいということですか?
A
違います。誰かを傷つける自由の話ではなく、自分の生き方を他者の評価に預けない、という話です。言葉を選ぶ配慮と、自分の考えを持つことは両立します。

まとめ

子どもの言葉が心に残るのは、感性が特別だからではなく、誰の目も気にせずに発しているからでした。大人になるほど、私たちは言葉を加工していきます。

それでも自分の言葉でいるために必要なのは、能力ではなく勇気です。そして、全員に好かれることではなく、信頼できる人をたったひとり持つことから始まります。

自分にとっての本当の自由とは何か。年の始まりに、また一歩、大切なことに気づかせてもらいました。本日もご一読をありがとうございました。

上村菜穂 プロフィール写真
著者プロフィール|上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役)

マーケティングの本質×SNSのトレンドを掛け合わせた、SNSからの女性集客を専門としている。14歳でメールマガジンを始め、8ヶ月で20,000人の登録を達成(当時の歴代最年少記録)。個人・法人の500件以上のSNSアカウントを個別に指導。これまでの登壇・研修先は、ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など。全国で延べ15,000名以上へ講演・研修を実施している。詳しいプロフィールはこちら

🎯 自分の言葉で発信するための考え方をお届けしています

読まれる文章の組み立て方や、自分らしさを言葉にするヒントを、メールマガジンでお届けしています。セミナーの開催情報も、こちらで最初にお知らせしています。

▶ メールマガジンに登録する