【小説ブックレビュー】『美丘』著:石田衣良

もう1年半以上前のこと、

インタビューの仕事で某塾に務めている方に話を聞いたときだった。

 

20代の男性だけれど、その人の言葉は巧みで

綺麗な単語が流れるように出てくる。

 

頭の中にはどんな言葉や文章が入っているんだろう?

 

 

そう思ってインタビュー後に聞いてみた。

 

「どうしたらそんなに綺麗な言葉で話せるのですか?表現力が巧みで聞いたことのない言葉ですが奥深く、想像もしやすくて…」

 

 

するとその人は言った。

 

「小説をよく読むかな。」

 

「どなたの作品を読まれるのですか?」

 

「色々ありますけど、一番は石田衣良さんですね。

石田さんの表現がすごく綺麗で好きなんですよ。」

 

 

 

そのインタビューの帰り道、書店で石田衣良さんの本を3冊購入した。

 

けれどちょうどそのとき、

小説よりビジネス本にはまっていた私は「今度読もう」と後回しにしてしまった。

 

 

 

購入した本の一冊が『美丘』だった。

 

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この本は裏表紙に書いてあるように、

主人公の女の子・美丘(みおか)は治療法も特効薬もない病に冒されていた。

 

幼稚園の頃の手術が原因だったのだけれど、

話の展開は大学時代。

 

 

この話の語り手である「僕」は太一という大学生。

大学の準ミスでお金持ちのお嬢様で、性格もいいし美人な彼女と付き合っていたけれど、はじめて会ったのがフェンスを越えているときでそんなことをしてしまう強烈な個性や奔放な行動力を持つ美丘に惹かれてしまう。

 

 

気付いたら美丘に思いを伝えていて、後に彼女に別れを切り出す。

 

が、美丘からいつ発症するかわからず、

発症した人全員が死に至る病気を潜伏していると聞く。

 

 

 

なのでストーリーの冒頭は、すでに美丘が亡くなり

思い出を回想してエピソードとして語っている構成になっている。

 

 

最後の展開がわかっているのに、

「次へ次へ…」と先を知りたくなってしまうのは

著者の石田さんの表現が巧みだからだろう。

 

 

美丘が思いもがけないところで登場し、

学内でも堂々と問題を起こす。

 

一見、感情がない人なのかと思っていると

心を開いた太一にとても素直だった。

 

 

そんな以外な人物構成や、

修羅場もある恋愛ストーリー、

そして美丘が生きている様子が懸命に描かれているストーリーが

美しい言葉を散りばめながら構成されている。

 

 

 

全力で一日、一日を生き抜くこと。

 

好きな人へ一心に想いを注ぐこと。

 

命の火の導火線が消えるまで、全力の美丘と太一の姿が描かれている。

 

 

 

【印象に残った言葉】

 

P6 太一のプロローグより

 

「ぼくにだって、今はわかる。きみはなにをしているときでも、必死で自分自身でいようとしただけなのだ。きみは真実を知っていた。命は火のついた導火線で、ためらっている余裕など本来誰にもないはずなのだ。」

 

 

 

P63 認知症で道に困っていて助けた老婆より、二人が好きと認識する前に美丘に向けて

 

「いいこと。この人はほんとうにいい人と思ったら、その人を絶対に逃したらいけませんよ。そういう人は一生にそう何度も出会えるものじゃないの。ね、わかった。あなたはこの人を放したらダメ」

 

 

P157 太一が元彼女を振って、美丘を選んだときの想いの囁きより

 

「ぼくは学んだのだ。誰かを選ぶことは、誰かを傷つけることでもある。

その勇気はもち続けなければいけないし、悪や痛みは引き受けなければならない。考えてみれば、ぼくは生まれて初めてきちんと恋愛をしていた。自分を守りながら、誰かをほんのすこしだけ好きになる。

そんな逃げ腰ではなく、恋愛の生むあらゆるプラスとマイナスを、自分の身体で受けとめていくこと。」

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